冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
*
不安がよぎったのは、グレイスだけではない。
この国の王女であるレティシアが、なぜあのような離れの塔にいるのか。
たまたま今は、あちらに用があっただけだったのかもしれない。
でも、国王が見せた動揺が、そこにいた全員にあまりいい想像をさせなかった。
王宮の正面入り口から外に出ると、右手奥の方にさきほど広間から見た塔があった。
二階建ての石造り、一見すると見張り台のような建物だ。
足早にそこへ向かうグレイスに続き、ディオンとダウリスとともにフィリーナも近づいていく。
近づいてわかったのは、塔の足元には蔦のつるが石の壁を沿い上へと手を伸ばしている。
ぐるりとはびこるような蔦の上。
城壁の外を臨むように作られたバルコニーのような場所があった。
傾きだしたばかりの太陽の下に、人影が見える。
照らされるバルコニーの方を見上げたまま、グレイスが立ち止まった。
不安がよぎったのは、グレイスだけではない。
この国の王女であるレティシアが、なぜあのような離れの塔にいるのか。
たまたま今は、あちらに用があっただけだったのかもしれない。
でも、国王が見せた動揺が、そこにいた全員にあまりいい想像をさせなかった。
王宮の正面入り口から外に出ると、右手奥の方にさきほど広間から見た塔があった。
二階建ての石造り、一見すると見張り台のような建物だ。
足早にそこへ向かうグレイスに続き、ディオンとダウリスとともにフィリーナも近づいていく。
近づいてわかったのは、塔の足元には蔦のつるが石の壁を沿い上へと手を伸ばしている。
ぐるりとはびこるような蔦の上。
城壁の外を臨むように作られたバルコニーのような場所があった。
傾きだしたばかりの太陽の下に、人影が見える。
照らされるバルコニーの方を見上げたまま、グレイスが立ち止まった。