冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
慌てて後を追うディオンとダウリスに、遅れまいとフィリーナも駆け出す。
三人が入っていった塔の中は、王宮とは違い小奇麗な印象を受けた。
埃は積もっていないし、二階へと続く石造りの螺旋階段に点々と取り付けられている窓にも曇りはない。
それが何を意味しているのか、あまり深くは考えたくないと思った。
「レティシア!」
吹き抜けになった二階からグレイスの叫ぶ声が聴こえる。
やはりレティシアはこの塔にいらっしゃるということが現実だったようで、さっき見た光景がまざまざと思い出された。
最後に追いつき見たのは、ダウリス、ディオンの背中に続いて、手狭な部屋の真ん中で、バルコニーに向かうグレイスの後ろ姿。
「レティシア、迎えに……来た」
途切れ途切れの声が、グレイスの心臓の圧迫を伝える。
少し息を上げた白銀の髪の向こうに見えた、バルコニーの明るさの中にたたずむ二人の姿。
フィリーナの心臓も、どくりと嫌な音で脈を乱した。
三人が入っていった塔の中は、王宮とは違い小奇麗な印象を受けた。
埃は積もっていないし、二階へと続く石造りの螺旋階段に点々と取り付けられている窓にも曇りはない。
それが何を意味しているのか、あまり深くは考えたくないと思った。
「レティシア!」
吹き抜けになった二階からグレイスの叫ぶ声が聴こえる。
やはりレティシアはこの塔にいらっしゃるということが現実だったようで、さっき見た光景がまざまざと思い出された。
最後に追いつき見たのは、ダウリス、ディオンの背中に続いて、手狭な部屋の真ん中で、バルコニーに向かうグレイスの後ろ姿。
「レティシア、迎えに……来た」
途切れ途切れの声が、グレイスの心臓の圧迫を伝える。
少し息を上げた白銀の髪の向こうに見えた、バルコニーの明るさの中にたたずむ二人の姿。
フィリーナの心臓も、どくりと嫌な音で脈を乱した。