冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「家はどこだ?」
「じょ、城下町の外れの方で……」
「そう」
全身を硬直させるフィリーナに、グレイスはいつの間にか間合いを詰め、眉にかかるフィリーナの前髪をさらりと人差し指で撫でる。
「この髪……夕陽に照ると赤く光って、黄昏の世界にとても綺麗に映えていた」
「……っ!?」
固まっていた身体の中で轟音が轟く。
一瞬にして心臓はたぎるほどの熱を持ち、顔はぼんと火を噴いた。
綺麗だなどと、まさか見目麗しい王子に揶揄されるなどとは思ってもみなかった。
「覗き見をするなら、足音は立てないようにするのが鉄則だ」
フィリーナを柱の方へ追い詰めるグレイスは、高い位置から美麗な真顔を覗き込ませる。
ついさっきまでは、麗しの見目に見惚れていたはずだったのに。
お近づきになれればと、儚い夢に胸をときめかせていた人が、こんなにも恐ろしいものに見えてしまうことがあるなんて。
背筋を舐める恐怖に身体を震わせ、影を作ってもなお美しさの変わらない王子に、フィリーナは精一杯の謝罪をする。
「じょ、城下町の外れの方で……」
「そう」
全身を硬直させるフィリーナに、グレイスはいつの間にか間合いを詰め、眉にかかるフィリーナの前髪をさらりと人差し指で撫でる。
「この髪……夕陽に照ると赤く光って、黄昏の世界にとても綺麗に映えていた」
「……っ!?」
固まっていた身体の中で轟音が轟く。
一瞬にして心臓はたぎるほどの熱を持ち、顔はぼんと火を噴いた。
綺麗だなどと、まさか見目麗しい王子に揶揄されるなどとは思ってもみなかった。
「覗き見をするなら、足音は立てないようにするのが鉄則だ」
フィリーナを柱の方へ追い詰めるグレイスは、高い位置から美麗な真顔を覗き込ませる。
ついさっきまでは、麗しの見目に見惚れていたはずだったのに。
お近づきになれればと、儚い夢に胸をときめかせていた人が、こんなにも恐ろしいものに見えてしまうことがあるなんて。
背筋を舐める恐怖に身体を震わせ、影を作ってもなお美しさの変わらない王子に、フィリーナは精一杯の謝罪をする。