冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
13章 愛する人
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「ヴィエンツェ国王、ジョゼフ・ヴィエント!
 たった今から、バルト国、ディオン・バルティアの名において、その首頂戴いたします!」

 広間に戻るなり、ディオンはつかつかとヴィエンツェ国王の元へと歩み寄る。
 腰に携えていた剣を抜くと、そばで国王の口にスプーンを運んでいた美女は慌てて立ち去った。
 ディオンのあまりの気迫に、国王は椅子ごとひっくり返ってしまった。

「ど、どどどどうなされたのだっ、ディオン王子っ!?」
「どうしたもこうしたもございません。あなたの傍若無人極まりない素行の数々、今まで黙って見守っておりましたが、私もとうとう堪忍袋の緒が切れました」
「い、い、い、一体何を……っ!?」
「レティシア姫は、これまであの塔で暮らしてこられたのですか」

 やっぱり誰が見てもそうだと思う。
 荒れ果てた王宮内とは一線を画し、綺麗に手入れのされた建物。
 手狭ではあるけれど、一台の寝台と鏡台に見たあの部屋の生活感。
 普段からレティシアは、その場所で過ごしていたことはあの場にいた全員が簡単に予想できた。
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