冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
残してきてしまったグレイスへの心配と、許しがたい裏切りをしたレティシアに憤りを感じながら離れの塔の扉を開ける。
中から吹き降りてきた風にディオンのマントが靡くと、二階から剣の競り合う音が聞こえてきた。
思わずディオンとフィリーナは顔を見合わせる。
急いで階段を駆け昇り、部屋の中を覗き見たそこには、剣を交わし合うダウリスとクロードの姿があった。
一瞬の気も抜けない緊張から、反発し合うように二人は互いの力に跳ね飛ばされる。
部屋の真ん中で、ダウリスはグレイスを、クロードはレティシアを守るように剣を構え直した。
「何をしている!!」
ディオンが一喝するも、両者ともに覇気を消さない。
一体どうしてこんなことになってしまったのか、恐怖だけが頭を混乱させる。
「ジョゼフ・ヴィエントは先刻をもって、王位から退いた。
ヴィエンツェ国は、事実上バルト国の領地となった!
その上でまだ何か争い事があるというのか!」
次期国王にふさわしい勇ましさで、その場を収めようとするディオン。
安心感を抱かせるたくましい背中の向こうに見える部屋の中。
ダウリスの後ろでグレイスが剣を片手に、一点を真っ直ぐに見つめていた。
中から吹き降りてきた風にディオンのマントが靡くと、二階から剣の競り合う音が聞こえてきた。
思わずディオンとフィリーナは顔を見合わせる。
急いで階段を駆け昇り、部屋の中を覗き見たそこには、剣を交わし合うダウリスとクロードの姿があった。
一瞬の気も抜けない緊張から、反発し合うように二人は互いの力に跳ね飛ばされる。
部屋の真ん中で、ダウリスはグレイスを、クロードはレティシアを守るように剣を構え直した。
「何をしている!!」
ディオンが一喝するも、両者ともに覇気を消さない。
一体どうしてこんなことになってしまったのか、恐怖だけが頭を混乱させる。
「ジョゼフ・ヴィエントは先刻をもって、王位から退いた。
ヴィエンツェ国は、事実上バルト国の領地となった!
その上でまだ何か争い事があるというのか!」
次期国王にふさわしい勇ましさで、その場を収めようとするディオン。
安心感を抱かせるたくましい背中の向こうに見える部屋の中。
ダウリスの後ろでグレイスが剣を片手に、一点を真っ直ぐに見つめていた。