冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
クロードの後ろから、美しいドレスを抱え走りにくそうにフィリーナ達のいる方へとやってくるレティシア。
「なりません! グレイス様ッ!!」
ダウリスの声に振り向くと、瞳の色を失ったグレイスがレティシアへと歩みを進めてきた。
その手には、鈍い光を放つ剣。
想像したくないグレイスの思惑が、フィリーナの恐怖を煽った。
――グレイス様……っ!
グレイスの心は、壊れてしまったのだろうか。
愛している人のために人の道を外れようとまでしたのに、愛し合っていると思っていた人は、自分ではない男性と寄り添い合っている。
その心を思うと、計り知れないほどの痛みに、胸が張り裂けてしまいそうだ。
大きすぎるほどの愛が、憎悪に変わってしまう反動は、グレイスの心の喪失からはわからないでもないけれど……
――だけど、……愛する人を傷つけさせては、だめ……!
フィリーナの足が駆け出したのは咄嗟の判断。
せめて、レティシアを逃がす手助けはしなければと、グレイスの心を完全に壊させまいとする思いが身体を動かす。
「なりません! グレイス様ッ!!」
ダウリスの声に振り向くと、瞳の色を失ったグレイスがレティシアへと歩みを進めてきた。
その手には、鈍い光を放つ剣。
想像したくないグレイスの思惑が、フィリーナの恐怖を煽った。
――グレイス様……っ!
グレイスの心は、壊れてしまったのだろうか。
愛している人のために人の道を外れようとまでしたのに、愛し合っていると思っていた人は、自分ではない男性と寄り添い合っている。
その心を思うと、計り知れないほどの痛みに、胸が張り裂けてしまいそうだ。
大きすぎるほどの愛が、憎悪に変わってしまう反動は、グレイスの心の喪失からはわからないでもないけれど……
――だけど、……愛する人を傷つけさせては、だめ……!
フィリーナの足が駆け出したのは咄嗟の判断。
せめて、レティシアを逃がす手助けはしなければと、グレイスの心を完全に壊させまいとする思いが身体を動かす。