冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「息はある。そこに寝かせる」
大切な人を奪われてしまうような錯覚に、ディオンを取り戻そうと手を伸ばすと、見上げた先に居たのはグレイスだった。
ディオンを軽々と抱き上げたグレイスは、部屋の隅にある寝台へと運んで行く。
「切り口は深くないが、出血が酷い」
「グレイス、様……?」
ディオンを抱き上げる瞬間。
近くに来たグレイスの碧い瞳には、先ほどまで失われていた光が戻っていたような気がした。
「レティシア、城に医者は居るか」
寝台にディオンを横たえ、真っ白なシーツを広げながら問うグレイスに、何も返事は返されない。
競り合っていた二人はともに剣を下ろし、クロードは慌ててレティシアを抱きしめに駆け寄った。
「この布でとりあえず傷口を合わせるように身体を縛る。ダウリス、手伝え」
「御意……!」
衝撃の光景から我に帰るダウリスは、鞘に剣を収めるなり、グレイスの迅速な処置を手伝いに急いだ。
大切な人を奪われてしまうような錯覚に、ディオンを取り戻そうと手を伸ばすと、見上げた先に居たのはグレイスだった。
ディオンを軽々と抱き上げたグレイスは、部屋の隅にある寝台へと運んで行く。
「切り口は深くないが、出血が酷い」
「グレイス、様……?」
ディオンを抱き上げる瞬間。
近くに来たグレイスの碧い瞳には、先ほどまで失われていた光が戻っていたような気がした。
「レティシア、城に医者は居るか」
寝台にディオンを横たえ、真っ白なシーツを広げながら問うグレイスに、何も返事は返されない。
競り合っていた二人はともに剣を下ろし、クロードは慌ててレティシアを抱きしめに駆け寄った。
「この布でとりあえず傷口を合わせるように身体を縛る。ダウリス、手伝え」
「御意……!」
衝撃の光景から我に帰るダウリスは、鞘に剣を収めるなり、グレイスの迅速な処置を手伝いに急いだ。