冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「どうしてお前がそんな顔をする?」
「……え……?」
ふと切なさを解いた碧い瞳が瞬く。
顔と言われて咄嗟に両頬に手を当てると、ひやりと濡れた自分の手の冷たさにびくりとした。
「ああ、濡れてしまっている」
くすくすと可笑しそうに笑い、絹の袖でぐいと頬が拭われる。
「あっ、あのっ、お召し物が……っ」
「このくらい構わないさ。
僕ごときに、特別な扱いは必要ない」
「グレイス様……」
「まあ、こんなところメリーに見つかりでもしたら、お前が何を言われるかはわからないけれど」
「わ、わたくしは、どうとでも……」
頬に触れた柔らかな布地が、離れてもまだ感触を残している。
柔らかい感触はフィリーナに夢を錯覚させ、頭をぼうっと浮かび上がらせていくようだ。
「……え……?」
ふと切なさを解いた碧い瞳が瞬く。
顔と言われて咄嗟に両頬に手を当てると、ひやりと濡れた自分の手の冷たさにびくりとした。
「ああ、濡れてしまっている」
くすくすと可笑しそうに笑い、絹の袖でぐいと頬が拭われる。
「あっ、あのっ、お召し物が……っ」
「このくらい構わないさ。
僕ごときに、特別な扱いは必要ない」
「グレイス様……」
「まあ、こんなところメリーに見つかりでもしたら、お前が何を言われるかはわからないけれど」
「わ、わたくしは、どうとでも……」
頬に触れた柔らかな布地が、離れてもまだ感触を残している。
柔らかい感触はフィリーナに夢を錯覚させ、頭をぼうっと浮かび上がらせていくようだ。