冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
*
深く瞬きをして、眩しい光の中で目を凝らすと、すぐそばに花瓶に活けられた赤い薔薇の花が見えた。
そこから香っているであろう薔薇の甘さが、頭をはっきりと冴えさせる。
閉じていたらしい目を開けると、横たえた顔を乗せていた腕が軽く痺れている。
背中の痛みで、寝台に預けていたのだと気づいた上半身を起こした。
そばにある棚には、さっきフィリーナが活けた薔薇が数本、花瓶の上で美しく咲き誇っている。
――ああ、そうだわ……
薔薇園からいただいて、ディオン様のお部屋に飾ったのだった……
夢を見ていたような気がして、その中で何かが甘く香っていたのは、これのおかげだったようだ。
ほっと安心したのは、愛しい人の香りに包まれているからだ。
視線をすぐそばに向ける。
目を閉じた額の上で、漆黒の髪が窓から流れ込んできた薔薇の香りの風にさらりと揺れる。
長い睫が閉じたままの目元に綺麗な影を作っていた。
深く瞬きをして、眩しい光の中で目を凝らすと、すぐそばに花瓶に活けられた赤い薔薇の花が見えた。
そこから香っているであろう薔薇の甘さが、頭をはっきりと冴えさせる。
閉じていたらしい目を開けると、横たえた顔を乗せていた腕が軽く痺れている。
背中の痛みで、寝台に預けていたのだと気づいた上半身を起こした。
そばにある棚には、さっきフィリーナが活けた薔薇が数本、花瓶の上で美しく咲き誇っている。
――ああ、そうだわ……
薔薇園からいただいて、ディオン様のお部屋に飾ったのだった……
夢を見ていたような気がして、その中で何かが甘く香っていたのは、これのおかげだったようだ。
ほっと安心したのは、愛しい人の香りに包まれているからだ。
視線をすぐそばに向ける。
目を閉じた額の上で、漆黒の髪が窓から流れ込んできた薔薇の香りの風にさらりと揺れる。
長い睫が閉じたままの目元に綺麗な影を作っていた。