冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
【番外編】グレイス様の憂鬱
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「もうお帰りですの……?」
「ああ、明日は来客があるからな」
寝台の上で、肌を晒した金の髪の女が、衣服を整えるグレイスにしなだれかかってきた。
細い手が、鍛えられた腹部で甘えたように蠢く。
――あんなに気持ちよさそうに啼いていたのに、まだ満足していないのか……
零しそうになる溜め息を、振り返った女の口の中に吹き込んだ。
「ん……」
とろりとした目つきを細めた瞼の隙間から見る。
――いや、満足していないのは……僕の方だな――……
不意に過ったあの赤い髪。
小さな口唇で必死に応えていた健気さを思い出してしまった。
胸の奥で、むずりとした違和感を覚える。
絡まってきた舌をおざなりに舐ってから離れると、女は淋し気に瞳を震わせた。
その瞳には下心が丸見えで、興醒めしながら宿場をあとにした。
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「もうお帰りですの……?」
「ああ、明日は来客があるからな」
寝台の上で、肌を晒した金の髪の女が、衣服を整えるグレイスにしなだれかかってきた。
細い手が、鍛えられた腹部で甘えたように蠢く。
――あんなに気持ちよさそうに啼いていたのに、まだ満足していないのか……
零しそうになる溜め息を、振り返った女の口の中に吹き込んだ。
「ん……」
とろりとした目つきを細めた瞼の隙間から見る。
――いや、満足していないのは……僕の方だな――……
不意に過ったあの赤い髪。
小さな口唇で必死に応えていた健気さを思い出してしまった。
胸の奥で、むずりとした違和感を覚える。
絡まってきた舌をおざなりに舐ってから離れると、女は淋し気に瞳を震わせた。
その瞳には下心が丸見えで、興醒めしながら宿場をあとにした。
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