冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
 現在、二人の王子を筆頭とするバルト国。
 一切の指揮を執るはずの国王は事実上不在だ。
 二人の父である国王は病に倒れて久しく、起き上がることもままならず別室で食事をとっている。
 その代わり、二人を見守るように広間に飾られている大きな肖像画には、この国の王妃だった人物の姿が描かれている。
 品よく掌を重ね、美しい白銀の髪を結い上げた絶世の美女は、幼子を残してこの世を去った王子達の母だ。

 山からの清らかな川を水源としたお堀に守られているバルト城。
 緑豊かな森林を台座としている雄々しい山々も、バルト国の所有地。
 その広大な土地を保有するバルト国は、事実上、二人の若き王子によって束ねられているのだ。


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