冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
4章 罪
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『お前は頭のいい子だと思っているよ。
 どうすることがお前にとって一番最良なのかは、……わかるだろう?』

 何度も口づけを与えながら、刷り込むように囁いてきたまろやかな声。
 王宮へ帰る最中も、イアンが後ろにいるのにもかからわず、フィリーナの名を呼んでは口唇をさらったグレイス。
 腫れぼったさを感じる口唇は、だんだんと頭をぼやけさせてくる。
 触れ合うごとに、勘違いをし始める心。

 ――“信じているよ”

 耳に残るまろやかな声からの信頼は、フィリーナの胸をのぼせ上がらせるには十分な威力だった。
 ただ、懐に仕舞っている小さな包みの存在が、夢から現実へと引っ張り上げようとする。

 ――これは、一体……?

 折りたたまれた紙には、何かが包まれている。
 食事に入れてくれと言われた、何か。
 これはきっと深くは考えてはいけないものなのではないかと、嫌な予感しかしなかった。
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