徳井涼平の憂鬱
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 その時はまさか12歳も年上だとわからなかったし、兄貴の彼女だとは知らなかった。
知っていたとしても・・・やっぱり好きになっていただろうけど。

 自宅の最寄り駅から二人電車に乗った。

「ごめんね、急に。」
「え?」
「お義母さんから聞いてなかったみたいだから・・・」
「や・・・だいたいいつもこんな感じだから」
「え?」
「あの人たち、母も父も兄貴も・・・言ってなかったっけ? みたいな感じで・・・」
「そうなんだ・・・ふふ。」

 中学の頃より更に身長が伸びて、こうやって並ぶと朱希さんのつむじが良く見える。
つむじまで可愛いなんて反則だ。

「私ね、一人っ子だから憧れてたのよね。」
「え?」
「兄弟がいたら、一緒に買物とかしたりするのかなあ、って。」
「どうだろ? 友達とかの話聞いてても、結構仲が悪かったりするし・・・」
「そうなの?」
「うん。」
「私の友達にね、弟と凄く仲の良い子がいてまるで恋人同士なの。」

 どきんと胸が鳴る。

「羨ましくて。だから、まあ・・・義理なんだけど・・・弟ができて舞い上がってます。」
「・・・こんな可愛げのないデカイ弟でも?」
「私の可愛い義弟を可愛げがない、とか言わないで貰えます?」
「はは・・・・・・じゃ、恋人にしてよ。」
「え?」

 冗談めかして言ったつもりなのに声が震えた。









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