徳井涼平の憂鬱
 爆発しそうな心臓を抑えて朱希さんの手を取った。

「・・・怒られない?」
「兄貴に?」
「じゃなくて・・・涼平ファンクラブのヒトに。」
「ないよ、そんなの。」
「むむむ・・・」

 女性をドキドキさせるようなことを、サラリとやってのける。やっぱり涼平くんは匡平の弟なんだなあ、と素直に感心する朱希だった。

 涼平が観たいと言ったのは話題のアクション映画だった。アクションの鮮やかさとは裏腹に主人公の不器用な恋愛模様が愛らしく、一途さに思わず朱希もホロリとさせられた。

「泣いてたよね。」
「は?」
「涼平くん泣いてた。」
「・・・朱希さんの方が・・・朱希の方が号泣だったじゃん。」
「あ、呼び捨て。」
「デート中だから。」
「おお・・・じゃあ・・・涼くん? 涼平? 涼ちゃん? てか恥ずかしいよ。涼平くんで!」
「なんだよ、つまんない・・・。」
「つまんなくない。楽しい。」

 だから、可愛いこと言うのヤメテ。キュン死、ってホントにあるのかも。

「そういう可愛いこと・・・兄貴と一緒の時も言うの?」

 あ、バカなこと聞いた。

「可愛い? 楽しいのが可愛いの?」

 ダメだ無自覚か・・・。

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