空ーsky-
「そう……」

「あっと、今は楠木ちゃんお客さんなんだった。……こちらになります」

海堂くんは、店員口調になると私を唯一空いていたカウンターに案内してくれた。

お店は、カウンタ―席が六席のテーブルが四つと決して広いわけじゃなかったが、アットホームな感じがしていいお店だった。やっぱり味が良ければ、今後もお世話になろうかな。ただ、海堂くんのお兄さんのお店ってところが気になるけど……

「注文はいかがしますか?」

カウンター席に手書きのメニューがあった。個人経営だからかメニューの数は少なく、本日のなんとかっていうのが多かった。

「えーと、本日のパスタお願いします」

「かしこまりました」

海堂君はカウンターの裏、おそらく調理室があろう部屋に入っていった。テーブル席の方ではまだ幼稚園くらいの男の子が苦戦しながらも、オムライスを頬張っていた。カウンター席では、若い夫婦が二組、余ったカウンター席では大学生くらいの男性がおいしそうに料理を食べていた。本でもよもっかな。今日借りた西塔先生の新作を持ってきたリュックから取り出した。
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