現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「なん、で……?」

突然のことに、思考が停止しそうになる。

追いかけてきてくれた? でも、なんのために?
家に着てまで、わざわざ別れ話? 橋田さんはいっしょじゃないの?

ああ、もうほんとにわかんない。


「急に来てごめん」

だけど、そう口にする志木さんは、ここ数日とは違って、落ち着いていて、穏やかで。
なんていうか、普段の志木さんのように見えて、なんだか安心した。

なにより、ちゃんと目を見て話してくれている。

別れ話をする覚悟ができたためにいっそ開き直っているだけかもしれないけど。


志木さんは言った。

「話があるんだ。出てこれる?」


なので私も答える。

「今、家に誰もいないんです。夜まで帰ってこないらしくて。だから、良ければ上がってください」

そう言って私が家の中へと促すと、志木さんはフッと笑った。


「? なにがおかしいんですか?」

「いや。前に俺がこの家に来た時は、沙代が絶対に家の中に上げまいとしてたのに、今日はそんなにすんなり入れてくれるんだと思って」

そういえば、確かに前回は、BL漫画を描いている時に来られたから、見られるわけにはいかないと思って、必死だったっけ。それでなくても、部屋の中はアニメのポスターやゲームのグッズだらけで、普通の男性には見られたくないものばかりだし。


……でも、今はそんな考え、一切なかった。

だって、志木さんだから。

私の全部を認めてくれる、志木さんだから。
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