現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
そういう事情があるのなら、私だって”行っちゃダメ”なんて言わなかったのに。
言ってくれないから、不安になるし、悲しくなった。


「ごめん。普段だったらきっと話してたんだけど……気まずい雰囲気だったろ。あの雰囲気で元カノと会うなんて言ったら、どんな理由があるにせよ絶対に嫌われると思って言えなかった。俺、お前からのあいさつも無視しちゃってたし」

あ、そういえば。私、月曜日の朝、あいさつを返してもらえなかったんだよね。


「本当ごめん。お前と気まずくて、なんて話しかけたらいいか、考えてもわからなくて。そんな時に、お前があいさつしてくれて。いつもみたいに返せば良かったのに、まさかお前からあいさつしてくれると思わなかったから、なんて返していいのか咄嗟にわからなくて、つい、無視しちまった」

「じゃあ、映画館で鉢合わせた時に気まずそうな顔したのも、そういう理由で?」

「うん。元カノに対して下心なんかなかったんだからもっと堂々としてれば良かったのかもしれないけど、それでも、元カノっていう存在とふたりきりで会ってたのは事実だし、しかも沙代に内緒で会ってたわけだし、あの場でなにを言っても、ただの言いわけにしかならなそうで。って、今この状況も、ただの言いわけなんだけど」

それに対しては、私は首を横に振った。
そんな事情があったのなら、言いわけとは思わない。むしろ、私も早とちりして申しわけなかった。


だけど、そもそもはそこじゃないんだよ。



「……気まずい顔した」

「だからそれは……」

「違う。今日じゃない」

「え?」


「私がひどいこと言っちゃった時、否定しなかった。気まずい顔した」


そう、あの時。

志木さんを責めるつもりは決してないけれど、あの時に否定してくれていれば、今日も橋田さんとのことをこんなに疑わなかったかもしれない。
そもそも、今日までこんなにギクシャクすることもなかっただろう。

あの時に気まずい顔をして、否定してくれなかったのは、なんで?


そう問うと、彼は。


「否定するのは簡単だった。だけど、沙代は自分に自信がないから、否定の言葉だけじゃ沙代は納得しないと思った。
だから、沙代が納得できるように、俺が沙代のどこを好きか、言おうと思ったんだ。そしたら、なんか……言葉に詰まったんだよね」

「え゛」

それは……なんか、その。気を遣おうとしてくれたのはすごくうれしいんだけど、つまり、好きな部分がなかったということデスカ……。


そう思い、ずーんと落ちこんでしまうけれど、彼は。
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