現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「そういえば」

志木さんが、なにかを思い出したように、私の目の前に”青い袋”を出して見せる。


……すごーく見覚えのあるその袋を見るのと同時に、背筋が凍った気がした。


「よく落とすよね、コレ。俺たちの間で、縁があるのかな」

そう言って彼が渡してきたのは……私がさっきアニメショップで買った、『ガチムチリーマンは上司に襲われて今夜も眠れない。』だった。

そ、そうか。さっき映画館の前で志木さんから走って逃げた時、思わずその場に本を落としてきちゃったんだ……!
読むのをあれだけ楽しみにしていたはずだったのに、落としてきたことにも気づかないくらい、落ちこんでいた。

て、ていうか。袋に入っている状態で渡されているとはいえ、彼の言葉からして、完全に中身見られてる……! アレな感じのアレすぎる表紙イラストを……!


「いや、なんか、もう。すみません、こんなのばっか読んでて」

とりあえず本は受け取るけれど……恥ずかしいし、いたたまれないし、ムードも台無しだし、彼と目が合わせられない。

だけど。

「なんで謝る? そういうのが好きな沙代が好きだ、ってさっき言ったばかりじゃん」

そんなふうに言われたら、もう、キュンとしすぎて胸が苦しい。
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