現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。

「係長、こっちの稟議書に目通しておいてもらいたいんだけど」

「……」

「聞いてる? 係長ー」

「はっ! す、すみません!」


なんてこと。私ってば、仕事中に上司の指示を、しかも志木さんの指示を無視しそうになってしまった。


昨日から、ずっと考えてる。これから、どんな自分になっていくべきか。
それは、志木さんにふさわしい立派な女性になるため。彼の隣に釣り合う彼女になるため。
……でも、それを考えていたが故に仕事中にボンヤリしてしまった……ふさわしい女性だなんて、聞いて呆れる。


「じゃあ、これな。
あと俺、昼休憩行ってくる」

席を立った志木さんが、私の席まで来て、稟議書を直接手渡してくれる。


「はっ、はい。わかりました」

そう答えながら、私は彼から稟議書を受け取ろうとしたけれど。


「あわわ」

なにに動揺しているのか自分でもよくわからないけれど、受け取ったそれを床に落としてしまった。
紙がバサーッと扇のように広がる。


「ご、ごめんなさい」

慌ててしゃがみこんで、広げた稟議書を拾い集める。

すると、志木さんも同じようにしゃがみこみ、拾うのを手伝ってくれる。


「す、すみません」

完全な私の不注意でこんなことになってしまっているのに、手伝わせてしまって申しわけなさしかない。


ふたりで稟議書を半分ずつ拾い集めると、志木さんはそれを私に手渡してくれるーーと思ったら。

急に、顔を近づけてきて。


手にした稟議書で顔を隠しながら、突然、キスをされた。
< 133 / 142 >

この作品をシェア

pagetop