現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「彼から聞きました。橋田さんはなにも悪くないですよ。気にしないでください」

私が笑顔でそう答えると、橋田さんも少し安心したような、そんな表情でほほえんだ。
……笑顔がとてもかわいい人だな、と思った。


すると橋田さんが、ポツリポツリと話を始める。

「……カズはやさしいから私のこと悪く言わないけど、映画館で会ったあの日、本当に私がかなり無理を言って彼と会ってもらってたんです。何回も何回も電話して、泣きながらお願いした……。
でもおかげでカズと最後の思い出が作れたし、彼への未練はなくなりました」

そう、だったんだ。そんなに無理を言われていたなんて、彼はひとことも言っていなかった。単に、話したいことがあるから会った、くらいにしか言ってなかったよね?

そう思ったら、志木さんの橋田さんへのやさしさがものすごく伝わってきた。
だからといって、嫌な気持ちには不思議とならず。
それどころか、彼は本当にやさしい人なんだということを改めて認識し、すごく温かい気持ちになった。


「私……カズと付き合っていた頃はなんでもカズに甘えていたから、今度からはひとりでいろいろがんばります。新しい恋をしたいなとも思いますけど」

そう言いながら、彼女は席を立った。

私も同じように席を立ちながら、「……志木には会っていかなくて大丈夫ですか?」と聞くと。


「彼と話すことはもうないから。今日は、あなたに謝りたかったんです。そうしないと、なんだか前に進めない気がしたから。
あ、でも私、今まで仕事もなくてフラフラしてたんですけど……ようやく就職が決まったんですよ。がんばります」

そう言って、またニコッとかわいい笑顔を見せてくれて……彼女は店を後にした。


大人しくて儚げな人だけど、まっすぐで、素敵な人だなと思った。
私も、あんなふうになりたい。
あんな、素敵な女性に。
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