現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「あの、その……」

「なに? ガチムチは好みのタイプではなかった?」

「ガッ、ガチムチとか言わないでください! だっ、大体それ、ゲイ用語ですよ! なんで意味知ってるんですか!」

「あれから気になって調べた。気になることは調べないと気が済まないタイプなもので」

志木さんはいたって冷静だ。私をからかっている、というわけでもなさそうだ。多分、志木さんはいたって真面目だ。


そんなやり取りをしていると、電車が駅に着いた。


「じゃあ、降ります……」

私が弱々しく腰をあげると、なぜか志木さんもいっしょに立ち上がる。


「言っただろ。送ってく」

「え? それは駅までって意味じゃ……?」

「家の近くまでだよ。ほら、早く」

そう言って、彼は先に電車を降り、スタスタと改札口の方まで向かっていく。送ってもらうはずの私は、そんな彼の背中を慌てて追いかける。


私の家は、駅からそう遠くない。徒歩十分ほどだ。
それでも、最近は変質者がたまに出るっていうウワサを聞いているし、こうして隣を歩いてくれるのはすごく心強い……。


だけど、私の心はさっきからザワザワしっぱなしだ。理由は言うまでもない。


「あの……」

私は、自分の足元を見つめたまま、ポツリと呟くように彼に話しかける。


「……誰にも言わないでください」
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