現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
彼の視線を感じたけど、私は顔を上げられない……。

「オタクってこと、周囲には隠してるんです。それでなくても、ガチム……えと、ああいう系統の本が好きだということは特に知られたくないというか。ほとんどの人には理解されない趣味でしょうし」

だから――と私が言葉を続けるよりも先に、彼は「言わないよ」と答えてくれる。


「ほ、本当ですか!?」

「うん。人の趣味はそれぞれだし、そんな必死になって隠すようなことでもないとは思うけど」

「隠すようなことですよ」

「そう? 井原さんがそう言うなら、俺は言わないよ」


よ、良かった。志木さんって、本当にいい人なんだ。クールでわかりづらい部分もあるけれど、それでいて今まで悪い評判を一切聞かなかったのは、なによりも彼のこの性格ゆえなんだろう。


「あ。でもひとつだけ条件というか、お願いがあるんだけど」

彼にそう言われ、私はなにも考えずに「なんでも言ってください!」と答えた。
志木さんなら、そんな無茶な条件は言わないと思ったし、仮に多少無茶な条件だったとしても、ガチムチ受け本を読んでいたことを周囲にバラされるよりよっぽどマシだ。


すると彼は、その場でゆっくりと足を止めた。

私も、彼に合わせて立ち止まる。


彼は、私の顔を見つめ、やわらかくほほえむ。

その表情に、ついまたドキッとしてしまったのも束の間……


「条件っていうのは」

「はい」




「俺と付き合ってほしいんだよね」





……







……はい!!!?
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