現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「おはようございます」

あいさつをしながら営業室に入ると、志木さんの姿は近くには見当たらなかった。

志木さんには失礼だけど、私はつい、ちょっと安心してしまった。


そのままとりあえず、普段通りに自分のデスクチェアに腰かけると、


(いつも通り、いつも通り)

と、私はまるで暗示のように、自分の心にそう言い聞かせていた。


……だけど。


「おはよう」

隣から、突然志木さんにそう声をかけられ、思わず「うわっ」と声に出して驚いてしまった。


「うわってなに。ちょっと傷つくんだけど」

「すっ、すみません! 私ったら、つい……!」

すぐに謝ると、志木さんは「いや、べつにいいけど」と言って、フッと笑った。気にしてはいなさそうだ。


ああ、私、こんな調子で普通に仕事になるんだろうか……。

そりゃあ、お付き合いといっても三ヶ月という期間限定だし、彼のことを無理に意識する必要もないのだろう。
だけど、それでも。
誰もが認めるイケメンで、有能な人で、そのうえ本当はすごくやさしい人だってわかっているから……どうしたって意識しちゃうよ。私、まともな恋愛経験ほぼないし。

あーーこんなことなら今まで乙女ゲームもっとやっとけば良かった! せめて少女漫画を読み込んでおけば良かった! 男女の恋愛よりも男同士の恋愛の方が好きすぎて、いつからか少女漫画もたまにしか読まなくなっていた!


……いやいや、これは現実世界なのだ。現実問題なのだ。乙女ゲームや少女漫画といっしょにしてはいけない。
なんてひとりツッコミを心の中でした後、

「おはようございまーす」

と、牧原さんが出勤してきた。
< 32 / 142 >

この作品をシェア

pagetop