現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
――知識もあるし、資格も取得している。これからは女性の社会進出がもっと当たり前の世の中になる。胸を張って、この話を受けなさい。

それが、その時に支店長が私に言ったことだった。


だけど、私は。



『ムリです』


一度、その話をお断りした。

だって、本当にムリだと思ったんだ。私に役職なんて。
仕事は好きだし、そうやって評価してもらえたことは本当にうれしかった。だけど私は、人を注意したり叱ったりすることが大のニガテだ。役職になったら、立場上そういうこともしなければならない。いや、本来ならば役職でなくても先輩は後輩に対してそういう姿を見せなければならないのだろうけど。

だから、私に係長なんてふさわしくないと思い、断ったのだった。
支店長も、私のそんな性格を知ってか、「そうか……」と、私の意見を確かに受け入れてくれたのだけれど。


『いやぁ、残念だ。井原が係長になれば周りの社員……とくに女性社員が喜ぶと思ったんだがな。それに、井原自身も、こんなに給料が増えるのに』


そう言って、支店長は突然、自分の手もとにあった電卓を叩き、私に見せてきた。


『……!?』

私は思わず、言葉を失った。
か、係長になるとこんなにお給料増えるの!?



『もう一度聞くが、どうする?』

さっさと諦めてくれれば良かったのに。そうすれば、私も迷うことはなかったのに。


目の前の電卓に表示されている数字に、心が揺れる。



『どうする?』

急かすように、支店長にもう一度そう聞かれる。


その瞬間、私の頭の中に、欲しかった漫画やらアニメのDVDやらゲーム機やらソフトやらがいろいろ浮かんできて……。



『ぜひ、やらせてください』


そう言ってしまったのでした……。
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