現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
すると、

「あ、忙しかった? ごめんな、じゃあ俺帰るよ」

やさしい彼は、私なんかに気を遣ってそう言ってくれた。
うう、心が痛むけれど、きっとこれが最善よね……⁉︎


「せ、せっかく来ていただいたのに本当にすみません。ケーキ、いただきますね!」

「いや、俺が勝手に来ただけだから。俺の方がごめんだよ。でも、休日なのに忙しいって、なにやってたの?」

「え゛」

まさかそんな質問が来ると思っていなかったので、思わず動揺する。
だけど、BL漫画を描いていましたとは言えず、ごまかそうとして、


「しっ、仕事してたんです!」

と答えた。



……すると、志木さんの目が、急に鋭いものへと変わった。


「仕事?」

そう聞き返され、私はなにも考えず、「は、はい」と言ってしまったのだけれど。


「休日まで家で片づけなきゃいけないほど、なにか仕事が溜まっているのか?」

「え、あっ」

そ、そうか、そういうことか。
そりゃ、志木さんは直属の上司だもんね。私が無断で休日に仕事していたら怒るよね。

でも、本当のことを言うわけにはいかず……なんてごまかしたらいいのか考えれば考えるほど、「あの、その、えと」と、しどろもどろになってしまう。
私のその態度が、おそらく志木さんにとっては、図星をつかれたことをごまかそうとしているように見えたのか、彼の表情はさらに険しいものへと変わる。


そして。

「仕事見せて」

「はっ? いや、その……」

「ちょっとおじゃまします!」

「ちょ、ちょっと志木さん⁉︎」

私の制止も聞かず、彼は私の家に押し入るように入り、二階へズンズンと上がっていく。そういえば、自分の部屋が二階にあるってことは、前に志木さんに話したことがあったなあ。それを覚えていたのか。さすが志木さん、記憶力がいい。
でも、やっぱり強引! 普通、今この家には私しかいなかったとはいえ、他人の家にこんなふうに無理やり入る⁉︎

ていうか、部屋に入れるわけにはいかない‼︎
彼氏を部屋に入れるというのは普通のことなんだろうけど、志木さんは彼氏っていうより上司って感じだし、それ以前に……!

私はすぐに彼を追いかけるけど、それは一歩遅く、私が彼を捕まえるよりも先に、彼は私の部屋のドアノブを回し、中に入っていく。


ーー万事休す。
< 71 / 142 >

この作品をシェア

pagetop