現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
Taka★さんは、チッと舌打ちをしながらも私から手を離してくれて、私はさっと彼から距離を保った。

ビックリしすぎてわけがわからない状態だったけど、キス、されそうになったんだよね、私?
今になって、恐怖でドキドキしてきた。手が震える。

でも、志木さんが来てくれた。そのことには、すごく安心する。


Taka★さんは、怖い顔で志木さんに詰め寄る。

「なんだよ、ほっとけよ。お前、オタクの彼女のことなんかどうでもいんだろ」

彼の言葉に、志木さんは眉間にシワを寄せて「は?」と答えるけれど、Taka★さんは続ける。


「だってさっき言ってただろ! オタクの彼女は面倒くさい、趣味が合わなくてダルい、って!」

「なんのことだよ」

「しらばっくれんな。だから俺がお前の代わりにサヨコさんを慰めていたんだろーが!」

Taka★さんの大きな声と強い口調に、私はまたドキドキと不安で緊張し始める。


……だけど。



「Taka★さん、やめてください」

私の言葉に、ふたりが私に振り返る。


急に緊張感が増す。
言葉を発したのはほぼ無意識だったから、なおさら。


だけど、これだけはどうしても言っておきたいことだから。


「Taka★さん、私にやさしくしてくれてありがとうございます。
でも、ウソはやめてください。私の彼は、そんなことは絶対に言いません」

そう、志木さんはそんなことは言わない。
正直、私は彼のことを、まだあまり知らない。
部屋に漫画はないし、私なんかを恋愛対象に選んでいる時点で趣味が悪いことは明白だし、彼に共感できる部分は今のところあまりない。

それでも、これだけはハッキリ言える。

彼は、ウソはつかない。
彼は、私がオタクだということもわかったうえで、私を好きだと言ってくれている。


だから彼は、そんな悪口、言わない。



「なので、その……失礼しますっ」

そう言って、私はささっと彼を横切り、志木さんの後ろへ隠れるようにして、Taka★さんから離れた。
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