現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「よし、帰ろう」

志木さんはそう言って、私の手をそっと握った。


……Taka★さんに触れられた時はなんだかすごく嫌だったのに、今は、ただただ安心する。


「あ、でもお会計……」

「沙代の分は払っておいたから」

そう言われ、私は彼に手を握られたまま、その場から去った。



駅まで向かう途中、彼はずっと私の手を握ってくれていた。


……でも、こちらへ振り返ることはなく、なにも話さない。


……怒ってるんだ。


そりゃあそうだよね。私、ほかの人からキスされそうになったんだから。志木さんが来てくれなかったら今頃どうなっていたか……。


――志木さん。

心の中で何度も彼に呼びかける。
声に出す勇気は、ない。


いつもみたいに、やさしい顔で振り向いて、やさしい声で話しかけてほしい。


いつの間にか、それが私の当たり前になりつつあったことに気づく。

当たり前なんかじゃない。すごく特別で、幸せなことだったんだ。


その幸せがどんどん遠のいていくような不安な気持ちになる。


お願い、怒っていても、せめて振り向いて――……。


私の願いが届いたのか、彼が道端に移動し、ふと足を止めた。

そして、私に振り返る。


すると。


「大丈夫だった?」
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