現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「え?」

思わず聞き返してしまう。

怒って、ない?


彼は続ける。

「もっと早く追いかければ良かった。助けるのギリギリになっちゃってごめん。怖かったよな?」


予想外のその言葉を聞いて、私は……。


「う……」

急に、涙がこぼれてきた。


「オ、オイ、沙代!?」

志木さんが私を見て戸惑っている。それはそうだろう。だけど、溢れでてくる涙は一向に泊まる気配を見せない。


「志、志木さんが怒ってると思ってたから……。だけど、やさしいから……」

「怒る? 俺が? なんで?」

問いかける志木さんの声はいつもみたいにやさしくて、私はいくらか気持ちを落ち着かせて話を続けることができる。


「だって私、志木さんに止められたのを振り切るようにしてオフ会に参加したから……。志木さんは、危険だから行くなって言ってくれたのに……」

「それは、俺がSNSとかオフ会とかそういうのに詳しくなくて、あくまで俺のイメージで引き止めたってだけだよ。実際は、リンゴさんも、パティさんも、ソルさんも、みんないい人で俺は楽しかったよ。……Taka★さんは嫌いだけど」

「だけど、Taka★さんはネット上のイメージとは全然違ったし。私は完全に、自分は大丈夫だって思いこんでました。
それになにより……オフ会が始まる前、Taka★さんが私と話したいって言った時、志木さん、結構どうでもよさそうだったし……」

言いながら、さらに涙がこぼれた。
私、かっこ悪い。
言わない方がいいことだったってわかっていたはずなのに、結局、口にしちゃってる。ただのかまってちゃんになってる。恥ずかしい。


志木さんの顔が怖くて見られなくて、私はそのまま俯く。


呆れた? 怒った?

不安に思っていると、志木さんは。


「……どうでもよくなんてなかったよ。あの人に沙代をとられたらどうしようって不安もあった。でも、動揺してるの見せたくなくて、カッコつけて余裕ぶってただけ」

「え……?」

私は思わず、顔を上げた。

そこには、ちょっと照れくさそうに頬をかく、見たことのない志木さんの姿があった。
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