VOICE~君の声を求めて
恋が芽吹くニ小説

キーンコーンカーン




「あっ……」




1時間目が始まってしまった。
サボろうかな?
こんな顔で教室は入れないし……





屋上に行こうかな……



授業中だから響くんの歌聞けないけど




私は濡れた頬をふき、ふらつきながら屋上へ向かった。




ガチャ




春風が私の頬を撫でる。

_______♪
あれ?
この声って



もしかして

________春風がなびく




あたたかな今日




その風に想いをのせる




絆を否定されたって



涙をバカにされたって




くじけずに




嘘の笑顔を貼り付けて




″大丈夫″って




君は笑うんだ



スカイブルー色の空が泣く



その涙で君の





痛みを流そうと______

やっぱり響くんだった。
声でしか認識できていないけど、私はそれどけで充分だった。



前とは違う曲だったな……



でもこの曲はいまの私に当てはまりすぎて……

また……っ

「……ふっ……っ」




視界がぼやける。
コンクリートの床に染み込んでいく、涙。
このごろ泣いてばかりだな……




青い空が私に微笑んだ。




「どうした?」



えっ……

いま……

「どうして泣いてんだ?」


優しくて、芯の通った綺麗な声。




響くんの声?



顔は見えないけど……。




私はこの声にすべてを打ち明けたくなった。



「私小さい頃からすごく仲のいい友達がいるの」



「あっ急にこんな話聞きたくないよね?あははっ」



私の乾いた笑い声がふたりきりの屋上にこだまする。





「聞くか聞かないかは俺が決める、それで?話の続き……」




「えっ?あっ、私の友達すごくて……」




「なにが?」




「成績もよくて、顔もいい、スポーツもできて、全然それを気取ってなくて……なんでもできちゃう子なの」




「へーそれでなんで君が自信なくしちゃうわけ?」




「なくしてなんか!」
私は思わず、否定してしまった。




「なくしてるよね?」




「……昔は大丈夫だったの……あんなことがある前は……」






これは私が小学校5年生の頃________




うっかり教室に忘れ物をした私は取りに行くため教室へ向かった。





そしたらまだ教室に残ってたクラスの女子たちの会話が聞こえてきた。




『詩音ちゃんってほんといい子だよね~』





『そうそう!』




『でも私ずっーと気になってたことがあるんだけど……』




『なになに?』




『なんで詩音ちゃんは琴音ちゃんと一緒にいるのかな?』





えっ?
私は耳を疑った。




だっていままで一緒に笑いあってきた友達が私のことをバカにしているような口調だったからだ。




『うーん、普通に仲いいからじゃないの?』




『えっ?だってあのふたり接点なさすぎるでしょ?しかも顔とか性格とか違いすぎるよ』




『あっ!』





いままで話を聞いていただけだった子がなにか考えついたような声を出した。





『私はわかったかもっ!たぶん詩音ちゃんは琴音ちゃんを引き立て役に使ってるんだよ』




『そっかぁ!納得した!』




『てかなんかウケるわー!引き立て役かぁ、ぴったりだわー!あはははっ』





彼女達の乾いた笑い声は私の心にひびいた。




それからというもの私は詩音と隣にいると周りからどう見られてるかを気にするようになった_________




「……ということがあったの」




私はまだ響くんとは目をみて話したことがないのに、詩音にも言えない私の過去のことを話した。





自分でもどうして話してしまったのかわからない。




でもこの人なら話してもいいと思った。




「辛かったろ……誰にも相談できなくて」




「う…んっ、だからっ……さっきまたあんなことがあって、思い出しちゃって……っ」
また涙が溢れた。



「そっか……」




「大丈夫……お前は充分魅力的だ……周りの目なんて気にする必要ない、周りがお前の魅力に気づいていないだけだ……」




優しい声で私を慰めるように言った。
でもその言葉の意味はわかってる。
うぬぼれたりはしない。




「ありがとう……お世辞でもいまは嬉しい……」




どうして響くんはこんなにも私にやさしいのだろうと



ふと不思議に思った。
でも女たらしの響くんは女子に優しくするのが当たり前なのかも……




あれ?
そう思ったらなんだか胸が苦しくなった。



キーンコーンカーンコーン

無情にも1時間目の告げるチャイムが鳴り響いた。
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