毒、ときどき蜜
箱には、さっきお茶をしたカフェのロゴが入っている。

箱の中には、食べないままに店を出てきてしまったチョコレートケーキがちょこんと入っていた。


やっぱり、美味しそうだ。

濃厚そうなチョコレートクリームでコーティングされた、つやつやのケーキ。


「これ、食べたかったんでしょ? せっかくだから、冷えてるうちに食べなよ」


そう言って尚は私をベンチに座らせる。

準備のいいことに、使い捨てのフォークまでつけてもらったらしい。


尚は私の隣に腰をおろし、フォークでさくりとケーキを切り取った。


「はい、梨央」


当たり前のように私の口の前にチョコレートケーキのかけらを差し出してくる。


「食べさせてあげるから、口開けて」


私は言われるがままに唇を開いた。


中にしっとりしたものが押し込まれる。

ふわりと広がるブランデーの香りと、舌をおおう甘さ。

チョコレート。


「……美味しい」


思わずつぶやくと、フォークで切り取ったチョコレートケーキを私に食べさせた尚が、にっこりと嬉しそうに笑った。


「良かったね」


くすくす笑いながら、さらにもう一口ぶんを切り取り、私の唇へと運ぶ。

私は素直に頷き、口を開いてありがたく頂いた。


甘い。とっても、甘い。

とろけてしまいそうなほど。



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