毒、ときどき蜜
……あーあ。

なんでこんなふうになっちゃうんだろ。

最近お互い忙しくて、ほとんど一ヶ月ぶりに会えたっていうのに。


会うといつも、尚が私に毒を吐いて、私がそれに怒って無言になって、尚はそれを飄々と見ているだけど特にフォローもせず。

気まずい(と思ってるのは私だけかも)沈黙のまま時間だけが流れていって、という恒例のパターン。

今日もそうだ。


思えばもう三年も付き合っているし、これはもしかして、倦怠期ってやつだろうか。

尚は私のこと面倒くさいって思ってるのか。

いや、もう飽きちゃってるのかも。


考えているうちに気持ちが鬱々としてきて、どんどん顔が下向きになっていく。


だって、普通なら、彼女が不機嫌になったら、何かしら言ったりやったりして、なんとか機嫌をとろうとするものじゃない?

なのに尚は、放置。いつもいつも放置。見てるだけ。


やっぱり、私のことなんかもう嫌いになっちゃったんだ……。


どん底にまで落ち込んだとき、ふいにあごをくすぐられて、私は驚きのあまり「ひゃっ?」と変な声をあげてしまった。

顔を上げると、細められた尚の目が間近にあった。

そして彼の手が伸びてきていて、私のあごの肉をたふたふと弄んでいる。


「ははっ、やっわらか。脂肪のかたまりって感じだな」


意気消沈している私の神経を逆撫でするかのような、その毒舌。


「……本気でダイエットしてやる! もう二度と二重あごなんて言わせないからね!」


怒りとともに言葉をぶつけると、尚がふふっと笑った。


< 6 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop