毒、ときどき蜜
………明らかに、馬鹿にしてる。

『どうせ痩せるなんて無理なんだから諦めればいいのに』とか思ってる。


私は「尚のばかっ!」と叫んで、伝票をつかみとって席を立ち、早足でレジに向かった。


ああもう、こういう短気で怒りっぽくて衝動的なとこもだめなんだよな、私。

めっちゃめんどくさい女じゃん……飽きられて当然だよ。


そうは思うものの、今さら引き返すわけにもいかず、代金を払って外へ出た。


むかむかしながら待っていると、尚はいつものようにのんびりと店から出てくる。

だからなんでそう余裕なのよ、なんで尚ばっかり余裕なのよ。


私は無言で歩き出す。

尚が無言でついてくる。謝りもしない。


なんかもう、私たち、倦怠期?

っていうか、もう終わり?


急に悲しくなってきて、唇を噛みながら俯いて歩く。


「おーい、梨央」


声をかけられたけれど、返事をする気になれず黙っていた。

すると。


「前見て歩かなきゃ、危ないよ」


という言葉とともに、ぐいっと腕を引っ張られた。

そのまま、細い脇道へと引きずり込まれる。


えっ、なにごと、と目をあげた、次の瞬間。


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