毒、ときどき蜜
顔が、熱い。

今にも火が出て燃えちゃうんじゃないかと心配になるくらい。


動揺のせいか冷えている指先で頬をおさえて、必死に紅潮をおさめようとするものの、どうやら無駄なようだ。

心臓がひどく忙しなく動いて、どんどん顔に血を送っているから。


三年も付き合っていると、最近は尚に対してどきどきすることなんてなくなっていた。

そのせいか、まさかの尚の行動に驚いて、全身が誤作動を起こしたみたいにおかしくなっている。


そんな私の緊張と動揺を見ぬいたように、尚は楽しそうに笑った。

それから腕を離して私を解放すると、側のベンチに尚が置いたらしい二つの紙袋を手に取った。


「はい、これ」


尚がそれを私に手渡す。

私は首を傾げながら大きいほうの紙袋を開いた。

中を見て、目をむく。


「え……っ、これ、さっきの」


店で試着したワンピースだった。


「え、なにこれ、どうしたの、なんで尚が持ってるの」


矢継ぎ早に訊ねると、尚は平然と「買ったから」と答えた。


「え………なんで」

「ん? 梨央が気に入ってるみたいだったから」

「………は」

「似合ってたし、プレゼント」


くらくらして、倒れそうだ。

呆然としていると、尚がもうひとつの紙袋を指して、「それは、包んでもらった」と言う。

どういうことかと開いてみると、小さなケーキの箱が入っていた。


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