呪いの笑い人形
 会議開始まで、あと1分。

 私はハンドバッグから、呪いの笑い人形を取り出した。

 田中直樹、今に見てろ。

 生き地獄を味あわせてやる。

 ふっ



「それでは、田中くん。プレゼンを始めてくれるか」

「はい」

 何も知らない馬鹿が。

「えー、それでは、新商品のチョコレートについて、プレゼンさせていただきます」

 プレゼンさせてたまるか。

「えー、我が社は、フランスで開催されるチョコレートの祭典、サロン・デュ・ショコラ・パリに参加することになりました」

 社長の前で恥をかかせてやる!

 まずは、脇の下をこちょこちょ。

 笑え! 笑え! 笑え笑え笑えー!

「今日は、三種類のチョコレートをご用意……あは、あは、あははははははははは」

 いいぞ、その調子で笑え!

「田中くん、急にどうしたんだね」

「いや、その、口が勝手に」

 ふっ、何も知らない馬鹿が。

 次は、顔をこちょこちょこちょこちょ。

 笑え! 笑え笑え笑え!

 もっと下品に笑え!

 気が狂ったように笑え!

「ぎゃは! ぎゃは! ぎゃははははははははは!」

 いいぞ、その調子でもっと笑え!

「田中くん、なんだその不真面目な態度は」

「いや、その、口が勝手に」

 ふっ、何も知らない馬鹿が。

 まだまだ生温い。

 究極の奥義、うひょうひょ百裂拳。

 うひょ! うひょ! うひょうひょうひょうひょうひょ! うひょー!

 お前は既に、うひょうひょ笑っている。

「うひょ! うひょ! うひょうひょうひょうひょうひょ! うひょ――――!」

 いいぞ、その調子で、うひょうひょ笑え!

「田中くん! この会議がどれだけ重要なのかわかっているのか!」

「わかっています。ですが、口が勝手に」

 ふっ、何も知らない馬鹿が。

 まだまだ生温い。

 うひょうひょ笑いながら踊れ!

 踊りながら! 社長の前でヨダレを垂らせー!

「うひょ! うひょうひょうひょうひょうひょうひょ! あひ――――!」

「田中くん! やめないか!」

「か、体が勝手に……」

 ふっ、今日はこのくらいにしておいてやるか。



「田中くん、残念だよ」

「しゃ、社長――――!」

 どうやら社長は会議室から出て行った模様。

 

「田中くん! いったいどういうつもりだ! 君の未来はないと思え!」

「専務! これは何かの間違いです! どうかお慈悲を!」

 なんとも情けない声。

 ふっ、これで終わりだと思うなよ。

 会社をクビになるまで笑わせてやる。
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