あなたに恋心~handlingーWarning??【完】
―――10年前のあの日。
ふたつ隣の町に住む、仲の良かった友達の引っ越しがあって。
一緒に自転車で学校から帰って、見送った帰り道。
たまたま。
制服のポケットから財布が落ちた。
財布と言っても高校生のなんてそんなに入ってない。
普通は。
というより私にとっては命の次に大切だった、今は亡きお祖母ちゃんから、高校の合格祝いにもらったお財布。
そしてたまたま教材費が必要でいつもより少しだけ多くは入ってた。
スッと来た通りすがりの自転車に拾われた。いや、奪われた。
一瞬固まったけれど。
気が付いたら追い掛けていた。
自転車で。我を忘れて。
「待ちなさ―――い!!!返しなさい!!さいふっ!!」
人間と言うものは追い掛けられると無条件で逃げるらしい。当然のごとく、猛ダッシュで逃亡された。
そして。
タクシーを捕まえようとしていた当時の董坂さんの後ろを駆け抜け、投げても被害の少ないスポーツバッグを犯人に投げ付けていた。
おまけに襲われそうになったところを助けられた。
当時まだ高校生だった私の目に、すごく大人ですごく格好いい王子様が映った。