幼なじみクライシス
千尋は昔から写真を撮るのが好きだった。
一緒に遊んでいるときも親のカメラを借りて空やら公園やら友達の写真をよく撮っていた。
「ゆうちゃんと遊ぶのが楽しいから、気持ちを残したいの。それに、おばあちゃんに写真を見せて話すとすっごくよろこんでくれるんだよ」
小学生の時だったか千尋にどうしていつも写真を撮るのかを尋ねるとそう言っていた。
体の弱い千尋の祖母はずっと入院していて、千尋は病院にいつも写真を持っていった。
高校1年の時、千尋の祖母が亡くなった際の遺影は、本人の希望で千尋が撮った明るい笑顔の写真だった。
千尋にとって写真は特別なものだった。
2時限目の授業が終わり、スマートフォンを確認すると千尋から連絡が入っていた。
『食堂で待ってるね』の文字とうさぎが跳ねているスタンプ。
「川口ー!」
「…なんだよ」
食堂に向かおうとしたところに声をかけてきたのは北村だった。
授業がいくつか重なっているのもあり、大学に入ってよくつるむメンバーの内の1人だ。
「なんでそんなに嫌そうなんだよ、傷つくだろ」
「食堂で待ち合わせしてんの。お前に構う時間ない」
「え、まさか女の子?」
「だったらなんだ」
「おいおいまさかカノジョとか言わねーよな」
「…うるさい。彼女だろうがなかろうがお前に関係ないだろ」
「あるに決まってんだろ!彼女持ちかどうかは友情に関わる」
「何言ってんだお前。つかなんだよ用件」
散々うっとうしいリアクションをしておいて北村はさらににやりとうざい笑みを浮かべた。
「言わねえならいい」
「待てって!良い情報持ってきたんだぞ」
「またコンパだろ」
「なんで分かった?」
「お前の良い情報はいつもそれだからな。断る」
大学に入学して1ヵ月。こいつの話題は大抵の場合女かコンパのどっちかだ。
歩く速度を速めて振り切ろうとしたが北村はさらに近づいてくる。
「速いってばー。今日は一味違うんだって!OLのお姉さんだぞ」
いつも思うがそのネットワークの広さでどうして彼女ができないのか不思議だ。
その飢えた下心を隠せばすぐにでもできるだろうに。
「行かねえ。めんどくさい。ついて来るな」
「川口~」
「あ、有ちゃん」
結局食堂近くまで付いてきた北村を引き離そうとしたとき、背中から声がした。
「ごめん、連絡しておいて私も今来たの」
振り向くといつもの笑顔で近寄る千尋。
そしてその隣に知らない男が立っていた。
柔らかい表情をしているが目が合った一瞬、瞳の奥で見定めるような視線を感じた。
本能的な警鐘が頭の中で鳴り響く。
一緒に遊んでいるときも親のカメラを借りて空やら公園やら友達の写真をよく撮っていた。
「ゆうちゃんと遊ぶのが楽しいから、気持ちを残したいの。それに、おばあちゃんに写真を見せて話すとすっごくよろこんでくれるんだよ」
小学生の時だったか千尋にどうしていつも写真を撮るのかを尋ねるとそう言っていた。
体の弱い千尋の祖母はずっと入院していて、千尋は病院にいつも写真を持っていった。
高校1年の時、千尋の祖母が亡くなった際の遺影は、本人の希望で千尋が撮った明るい笑顔の写真だった。
千尋にとって写真は特別なものだった。
2時限目の授業が終わり、スマートフォンを確認すると千尋から連絡が入っていた。
『食堂で待ってるね』の文字とうさぎが跳ねているスタンプ。
「川口ー!」
「…なんだよ」
食堂に向かおうとしたところに声をかけてきたのは北村だった。
授業がいくつか重なっているのもあり、大学に入ってよくつるむメンバーの内の1人だ。
「なんでそんなに嫌そうなんだよ、傷つくだろ」
「食堂で待ち合わせしてんの。お前に構う時間ない」
「え、まさか女の子?」
「だったらなんだ」
「おいおいまさかカノジョとか言わねーよな」
「…うるさい。彼女だろうがなかろうがお前に関係ないだろ」
「あるに決まってんだろ!彼女持ちかどうかは友情に関わる」
「何言ってんだお前。つかなんだよ用件」
散々うっとうしいリアクションをしておいて北村はさらににやりとうざい笑みを浮かべた。
「言わねえならいい」
「待てって!良い情報持ってきたんだぞ」
「またコンパだろ」
「なんで分かった?」
「お前の良い情報はいつもそれだからな。断る」
大学に入学して1ヵ月。こいつの話題は大抵の場合女かコンパのどっちかだ。
歩く速度を速めて振り切ろうとしたが北村はさらに近づいてくる。
「速いってばー。今日は一味違うんだって!OLのお姉さんだぞ」
いつも思うがそのネットワークの広さでどうして彼女ができないのか不思議だ。
その飢えた下心を隠せばすぐにでもできるだろうに。
「行かねえ。めんどくさい。ついて来るな」
「川口~」
「あ、有ちゃん」
結局食堂近くまで付いてきた北村を引き離そうとしたとき、背中から声がした。
「ごめん、連絡しておいて私も今来たの」
振り向くといつもの笑顔で近寄る千尋。
そしてその隣に知らない男が立っていた。
柔らかい表情をしているが目が合った一瞬、瞳の奥で見定めるような視線を感じた。
本能的な警鐘が頭の中で鳴り響く。