幼なじみクライシス
真向いににこにこ笑顔の千尋。
その隣にうさんくさい笑みの男。
右隣に空気の読めないバカ。
なんでこんなメンツの中昼飯を食わないといけないんだ。
「えっと、有ちゃんのお友達も初対面だから、私から自己紹介します。橋本千尋です。それで、先輩が昨日話した写真サークルの部長さんで佐藤先輩。有ちゃん…あ、さっき先輩に話してた幼なじみが彼です」
「川口です」
「佐藤です。さっきたまたま橋本さんに会って、色々話してたら遅れてしまったようで悪かったね。しかも昼食まで一緒になって。迷惑じゃなかったかな」
千尋が遅れたことを自分がそうさせたみたいな言い方が気に障る。
一見穏やかそうだが佐藤から感じるぴりぴり感は明らかに敵対心を抱いている人間のものだ。
それを隠そうともしないところがまた気に食わない。
「そんなことないですよ!初めまして、あの、有ちゃんのお友達さんですよね」
「そうっす!北村です。いや~川口にこんな可愛い幼なじみがいたなんて知らなかったなー」
言うわけないだろ。特にお前には知られたくなかったからな。
おれと佐藤の緊張感を全く意に介さないように2人は和やかなムードだ。
「仲良さそうだね。僕も橋本さんみたいな可愛い幼なじみが欲しかったよ」
「いえそんな、確かに有ちゃんはずっと家も隣だったので、仲は良いですけど…」
おいおい直球かこの野郎。うさんくさい王子スマイル振りまいてんじゃねえ。
千尋も簡単に照れやがってなんだっつーんだ。
意識を食事に集中し、早く平らげようとしている隣で北村が名案を思い付いたように顔を輝かせた。
嫌な予感しかしない。
「もしかして先輩フリーすか!?」
「うん、恋人はしばらくいないね」
「てことは絶賛募集中!?」
「まあ、そうだな。趣味とか合う子がいれば」
「じゃあ今日とか空いて…いってぇ!」
反射的に北村の足を踏みつける。向かいに聞こえないよう襟元を引っ張って引き寄せた。
「お前千尋の前でさっきの話題出したらぶん殴るぞ」
北村はまだ足が痛むのか涙目のまま無言で何度も頷いた。
そもそもストレートにおれを牽制している佐藤にコンパを持ちかけるなんてどこまでも空気の読めないバカだ。
さっさと食事を終わらせて千尋をこの2人から引き離したい。
「千尋、それ今日撮るんだろ?」
千尋は食堂に例のカメラを持ってきていた。
3時限の授業が無いことはお互い確認済みだ。
「うん!天気も良いし、先輩に良い場所も教えてもらったからいい写真になるよ」
そこでまた佐藤が出てくるのは気に食わないが。
「じゃあ早くいこうぜ」
「橋本さんに聞いた通り、川口くんは良い被写体の要素を持ってるね」
席を立ちあがったおれをじっと見ながら佐藤は言った。
「背が高くて頭が小さいしバランスが良い。僕も一度撮ってみたいな」
「お断りします。人見知りなもんで。行くぞ千尋」
それだけ言って食堂を出た。残された2人に慌てて頭を下げて千尋が追ってくる。
「もう、有ちゃん人見知りなんて初めて聞いたけど」
先輩への無礼な態度を感じ取った千尋が咎めるように言った。
「幼なじみがそんなことも知らねえのかよ」
「嘘つき。有ちゃんに人見知りなんて単語似合わないよ」
「人見知りだったら良かったなー」
「なに言ってんの?有ちゃん意味わかんないよ」
お前が人見知りならそう簡単にあいつに近づかねえからだよ。
心の中の呟きは短いため息に吐き出した。
その隣にうさんくさい笑みの男。
右隣に空気の読めないバカ。
なんでこんなメンツの中昼飯を食わないといけないんだ。
「えっと、有ちゃんのお友達も初対面だから、私から自己紹介します。橋本千尋です。それで、先輩が昨日話した写真サークルの部長さんで佐藤先輩。有ちゃん…あ、さっき先輩に話してた幼なじみが彼です」
「川口です」
「佐藤です。さっきたまたま橋本さんに会って、色々話してたら遅れてしまったようで悪かったね。しかも昼食まで一緒になって。迷惑じゃなかったかな」
千尋が遅れたことを自分がそうさせたみたいな言い方が気に障る。
一見穏やかそうだが佐藤から感じるぴりぴり感は明らかに敵対心を抱いている人間のものだ。
それを隠そうともしないところがまた気に食わない。
「そんなことないですよ!初めまして、あの、有ちゃんのお友達さんですよね」
「そうっす!北村です。いや~川口にこんな可愛い幼なじみがいたなんて知らなかったなー」
言うわけないだろ。特にお前には知られたくなかったからな。
おれと佐藤の緊張感を全く意に介さないように2人は和やかなムードだ。
「仲良さそうだね。僕も橋本さんみたいな可愛い幼なじみが欲しかったよ」
「いえそんな、確かに有ちゃんはずっと家も隣だったので、仲は良いですけど…」
おいおい直球かこの野郎。うさんくさい王子スマイル振りまいてんじゃねえ。
千尋も簡単に照れやがってなんだっつーんだ。
意識を食事に集中し、早く平らげようとしている隣で北村が名案を思い付いたように顔を輝かせた。
嫌な予感しかしない。
「もしかして先輩フリーすか!?」
「うん、恋人はしばらくいないね」
「てことは絶賛募集中!?」
「まあ、そうだな。趣味とか合う子がいれば」
「じゃあ今日とか空いて…いってぇ!」
反射的に北村の足を踏みつける。向かいに聞こえないよう襟元を引っ張って引き寄せた。
「お前千尋の前でさっきの話題出したらぶん殴るぞ」
北村はまだ足が痛むのか涙目のまま無言で何度も頷いた。
そもそもストレートにおれを牽制している佐藤にコンパを持ちかけるなんてどこまでも空気の読めないバカだ。
さっさと食事を終わらせて千尋をこの2人から引き離したい。
「千尋、それ今日撮るんだろ?」
千尋は食堂に例のカメラを持ってきていた。
3時限の授業が無いことはお互い確認済みだ。
「うん!天気も良いし、先輩に良い場所も教えてもらったからいい写真になるよ」
そこでまた佐藤が出てくるのは気に食わないが。
「じゃあ早くいこうぜ」
「橋本さんに聞いた通り、川口くんは良い被写体の要素を持ってるね」
席を立ちあがったおれをじっと見ながら佐藤は言った。
「背が高くて頭が小さいしバランスが良い。僕も一度撮ってみたいな」
「お断りします。人見知りなもんで。行くぞ千尋」
それだけ言って食堂を出た。残された2人に慌てて頭を下げて千尋が追ってくる。
「もう、有ちゃん人見知りなんて初めて聞いたけど」
先輩への無礼な態度を感じ取った千尋が咎めるように言った。
「幼なじみがそんなことも知らねえのかよ」
「嘘つき。有ちゃんに人見知りなんて単語似合わないよ」
「人見知りだったら良かったなー」
「なに言ってんの?有ちゃん意味わかんないよ」
お前が人見知りならそう簡単にあいつに近づかねえからだよ。
心の中の呟きは短いため息に吐き出した。