君の手で
正一は詩織の事をよく知らないからそう簡単に言えるんだという思いを母に抱いた。
詩織は昔からお転婆で事あるごとに正一を驚かせたりしてからかっていた。
服にくっつく植物を背中に入れて毛虫を入れたーって言ったり、覚えたばかりの手品でハンカチを出して蛇って言ったりして、そのたびに彼は泣かされていた。
今でもその時を思い出すことがある正一。
食事中にそれを思い出し、手が止まっていたので照れてるの?とからかわれた正一は斎藤なんか知らないと言って食事を切り上げて自室に籠った。
正一は布団に潜り込み携帯を見る。
やはり詩織は可愛い。
確かに可愛いけど……、昔の悪戯のトラウマで彼女に苦手意識がある。
その悪戯の前科が無ければ両手(もろて)を挙げて喜べるんだけどと正一は思う。
正一は約束なんか知らないと一言だけ書いて詩織に返信した。
着信音が鳴り響き、詩織は携帯を開く。
彼女はその返信を見てちょっと悲しい気持ちになったけど、新しい悪戯を思い付いて笑いを堪えられなかった。
幼稚園の時の約束守ってくれないんだー!針千本飲ましちゃうよー!と針の代わりにたくさんの綿棒が入った箱の画像を添付してメールを正一に送った。
その返信に幼稚園の時の約束は時効と返した。
約束に時効なんかないよと膨れっ面の自撮り画像を載せて返す詩織。
その顔を見て吹き出してしまう正一だった。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop