次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「指輪なんかより、いまお前に会っておくことの方が大事だと思った」
ディルは真面目な顔で、じっとプリシラを見つめた。その表情から彼の覚悟が伝わってくる。王宮からの命令を無視しこんなことをすればディル自身の立場も危うくなる。それも承知のうえで、プリシラに会いに来てくれたのだ。
「‥‥ありがとう。もしかしたら、もう会えないかもって思ってた。だから‥‥嬉しい。もう一度、あなたに会えてよかった」
プリシラの目尻に浮かんだ涙をディルが優しくぬぐう。ずっと気丈に振る舞っていたが、ディルの顔を見たら緊張の糸が緩んでしまった。押し殺していた不安や弱音がポロポロと出てきてしまう。
「頭の片隅でね、お父様が犯人だったらいいのにとも思ってる。親不孝な娘よね。けど、それならあなたの身は安全だもの。もしルワンナ王妃が真犯人だったら、あなたも危ないから‥‥」
震える声で話し続けるプリシラを、ディルはぎゅっと、力強く抱き寄せた。
愛する人に守られている幸福と、もうすぐこの手を失ってしまうかもしれないという絶望の間で、プリシラは揺れた。
「あぁ。でも、ディルを支えられる妻になるって、そう約束したばかりなのに、果たせないかもしれないのね」
公爵が犯人と断定されれば、当然ディルとは離縁、王太子妃の身分は剥奪される。命だけは助けられたとしても、二度と王宮には戻れない。
「たとえロベルト公爵が犯人だったとしても、お前は必ず取り戻す。私利私欲を優先させる傲慢な王子だとそしられても構わない。これだけは覚えておいてくれ。俺の妻は‥‥お前だけだ」
真摯な口調でそんなふうに言われ、プリシラの胸は熱く高鳴る。
ディルは真面目な顔で、じっとプリシラを見つめた。その表情から彼の覚悟が伝わってくる。王宮からの命令を無視しこんなことをすればディル自身の立場も危うくなる。それも承知のうえで、プリシラに会いに来てくれたのだ。
「‥‥ありがとう。もしかしたら、もう会えないかもって思ってた。だから‥‥嬉しい。もう一度、あなたに会えてよかった」
プリシラの目尻に浮かんだ涙をディルが優しくぬぐう。ずっと気丈に振る舞っていたが、ディルの顔を見たら緊張の糸が緩んでしまった。押し殺していた不安や弱音がポロポロと出てきてしまう。
「頭の片隅でね、お父様が犯人だったらいいのにとも思ってる。親不孝な娘よね。けど、それならあなたの身は安全だもの。もしルワンナ王妃が真犯人だったら、あなたも危ないから‥‥」
震える声で話し続けるプリシラを、ディルはぎゅっと、力強く抱き寄せた。
愛する人に守られている幸福と、もうすぐこの手を失ってしまうかもしれないという絶望の間で、プリシラは揺れた。
「あぁ。でも、ディルを支えられる妻になるって、そう約束したばかりなのに、果たせないかもしれないのね」
公爵が犯人と断定されれば、当然ディルとは離縁、王太子妃の身分は剥奪される。命だけは助けられたとしても、二度と王宮には戻れない。
「たとえロベルト公爵が犯人だったとしても、お前は必ず取り戻す。私利私欲を優先させる傲慢な王子だとそしられても構わない。これだけは覚えておいてくれ。俺の妻は‥‥お前だけだ」
真摯な口調でそんなふうに言われ、プリシラの胸は熱く高鳴る。