次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「同情でも、戯れでも、なんでもいい。
‥‥私をディルのものにして」
そう言ったプリシラは耳まで真っ赤に染まっていた。 早鐘のように打ちつける鼓動は自分のものか、それともディルのものだろうか。互いの熱が溶け合うほどに、彼を近くに感じる。
もう会えないかもしれない。ならば、せめて一度だけ‥‥。そう望むのは贅沢だろうか。
「ーー卑怯というより反則に近いな。こんなの、絶対に抗えないだろ」
そんな台詞とともに、ディルの端正な顔が近づいてくる。熱っぽい瞳で見つめられれば、抗えないのはプリシラの方だ。身じろぎもできず、体をかたくする。コツンと額がぶつかり、鼻先が触れ合う。その瞬間、彼は甘く、妖しい獣に姿を変えた。
「ーーんっ」
噛みつくような、むさぼるような、激しいキス。こんなキスは知らない。プリシラは息をすることも忘れ、ただただディルの熱を受け止めた。
ひとしきり唇を味わい尽くしてから、彼はようやくプリシラを解放した。
「ーーっと。ここで流されたら、これまでの我慢が水の泡だな」
「え、なぁに?」
「ちょっと手、貸して」
ディルは自分の胸ポケットからなにかを取り出すと、プリシラの手のひらに落とした。
「それ、覚えてるか?」
「なに?指輪?‥‥嘘。これって‥‥」
信じられない思いで、プリシラは自身の手にあるものを見つめる。それは美しい指輪だった。繊細な細工に、キラキラと輝く大粒のペリドット。
(忘れるはずないわ。これは、あの日、私がディルに贈ったーー)
「なんでここにあるの⁉︎ あれは投げ捨ててしまったはずよ」
振られたショックで丘の上から投げ捨てたのだ。行方なんてわかるはずがない。
「すぐに探して拾った。お前が勢いよく放り投げるから大変だったんだぞ。それからは、ずっとここに」
ディルは自分の胸ポケットを指して言った。
「結婚式のエメラルドをあいつらに渡したのは、俺にはそれがあるからだ。俺にとってはその指輪の方が大事だから」
「‥‥ずっと持っててくれたの?どうして‥‥」
「言わなきゃわかんないか?」
プリシラはこくりとうなずいた。この指輪の意味を、真実を、ディルの言葉で聞きたいのだ。
‥‥私をディルのものにして」
そう言ったプリシラは耳まで真っ赤に染まっていた。 早鐘のように打ちつける鼓動は自分のものか、それともディルのものだろうか。互いの熱が溶け合うほどに、彼を近くに感じる。
もう会えないかもしれない。ならば、せめて一度だけ‥‥。そう望むのは贅沢だろうか。
「ーー卑怯というより反則に近いな。こんなの、絶対に抗えないだろ」
そんな台詞とともに、ディルの端正な顔が近づいてくる。熱っぽい瞳で見つめられれば、抗えないのはプリシラの方だ。身じろぎもできず、体をかたくする。コツンと額がぶつかり、鼻先が触れ合う。その瞬間、彼は甘く、妖しい獣に姿を変えた。
「ーーんっ」
噛みつくような、むさぼるような、激しいキス。こんなキスは知らない。プリシラは息をすることも忘れ、ただただディルの熱を受け止めた。
ひとしきり唇を味わい尽くしてから、彼はようやくプリシラを解放した。
「ーーっと。ここで流されたら、これまでの我慢が水の泡だな」
「え、なぁに?」
「ちょっと手、貸して」
ディルは自分の胸ポケットからなにかを取り出すと、プリシラの手のひらに落とした。
「それ、覚えてるか?」
「なに?指輪?‥‥嘘。これって‥‥」
信じられない思いで、プリシラは自身の手にあるものを見つめる。それは美しい指輪だった。繊細な細工に、キラキラと輝く大粒のペリドット。
(忘れるはずないわ。これは、あの日、私がディルに贈ったーー)
「なんでここにあるの⁉︎ あれは投げ捨ててしまったはずよ」
振られたショックで丘の上から投げ捨てたのだ。行方なんてわかるはずがない。
「すぐに探して拾った。お前が勢いよく放り投げるから大変だったんだぞ。それからは、ずっとここに」
ディルは自分の胸ポケットを指して言った。
「結婚式のエメラルドをあいつらに渡したのは、俺にはそれがあるからだ。俺にとってはその指輪の方が大事だから」
「‥‥ずっと持っててくれたの?どうして‥‥」
「言わなきゃわかんないか?」
プリシラはこくりとうなずいた。この指輪の意味を、真実を、ディルの言葉で聞きたいのだ。