次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「子どもの頃からずっとずっと好きだった。兄嫁になる女だとわかっていても、俺はプリシラしか見てなかった」
プリシラの告白とまったく同じ台詞をディルは返した。
その言葉は耳ではなく、プリシラの心臓に直接響くようだった。くすぐったいような幸福感が体中を満たしていく。
「ほ、本当に?からかってない?‥‥ディルも同じ気持ちでいてくれたの?」
プリシラは彼がうなずいてくれることを期待していたが、ディルは少し考えてからゆっくりと首を振った。
「同じ‥‥は心外だな。俺の方がずっと重い。なにせ他の女を好きになろうとも、なれるとも思わなかったしな」
「けど、付き合ってる人はたくさんいたじゃない。それも私とはタイプの違う女性ばかり」
プリシラは少しだけ拗ねてみせた。このくらいのワガママは許されるだろう。新しい恋人の噂を耳にするたび、どれだけ胸が痛んだことか。関心のない振りをするのに、どれだけ苦労したことか。
「お似合いねって笑ってたじゃないか」
ディルはいたずらな笑みを浮かべて、そんなことを言う。
「ーー私、仮面をかぶるのは得意なの。ディルもよく知ってるでしょ」
「そうだな。でも、もう仮面はかぶらなくていい。俺も本心を隠すのはやめるから」
ディルはまっすぐにプリシラを見つめた。甘く甘く、視線が絡み合う。このまま
時が止まってしまえばいいのに。プリシラはそんなふうに思った。
「同情でも戯れでもない。いままでも、これからも愛してるから、俺のものになってくれるか?」
「‥‥はい」
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