次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「感謝する、よく決心してくれた。ただ、君も弟も絶対に死ぬな。いざとなればルワンナ王妃に寝返ってもいいから生きろ」
「いいえっ。そんなことは決して……」
リズはぶんぶんと、大きく首を横にふった。
「これは自分勝手な王太子殿下の命令だよ。あいつの泣き顔は……見たくないんだ」


ディルは側に控えていたターナに厳しい口調で命じた。
「至急、王都警備隊の隊長を呼べ。無実のロベルト公爵の釈放と真犯人のルワンナ王妃と実行犯のナイードの身柄の確保を命じる」
王妃とナイードとの密約の手紙には、ご丁寧なことに王妃の印章が押されている。動かぬ証拠となるだろう。
「特にナイードだ。間違っても自害なんかさせるなよ。フレッドの行方について、絶対に吐かせろ」
「ですが、フレッド殿下はもう……」
ターナは言葉を詰まらせ、苦しげに目を伏せた。リズの話では、ナイードから暗殺遂行の報告はたしかにあったとのことだった。
「いや、まだ希望はあると思う。ナイードがもし、あの事を知ったのなら……あいつはルワンナ王妃に忠誠を誓っているようには見えない。金で雇われただけだろう」
別の金づるを見つけたら、王妃をあっさり裏切ってもおかしくはない。
「……頼むからそうであってくれよ」
ディルは祈るような気持ちでつぶやいた。


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