次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
懐かしい夢を見た。あれは、いくつくらいの時だっただろうか。ディルとフレッドと三人で遠乗りに出かけたのだ。世継ぎの王子であるフレッドにはたくさんの教師がついていて、幼いころから多忙だった。三人で仲良く遊んだ記憶は、あの一度きりだ。

季節は夏の始まりのころ。碧く輝く湖のほとりには心地よい風が吹き抜ける。新緑の絨毯は、真っ白なクローバーの花々で飾られていた。
三人でたくさんの花冠を作った。フレッドとディルはとても上手で、プリシラが作ったものの不格好さをよけいに際立たせた。
フレッドは一番綺麗に作れたものをプレゼントだと言って、プリシラの頭に乗せてくれた。ディルは不器用なプリシラに呆れながらも、根気強く作り方を教えてくれた。
他愛ない馬鹿話で涙が出るほど笑い転げて、時間はあっという間に過ぎていった。

あの頃は、恋も愛もまだ知らなかった。ただ純粋に二人のことが大好きで、一緒にいられることが嬉しくて仕方なかった。

(ディル、フレッド……いつか、また三人で……)

「ーーシラ。プリシラ、大丈夫?」
ガンガンと激しく打ちつけられるように、頭が痛む。手も足も鉛のように重い。うっすらとまぶたを開けるだけで精一杯だ。狭い視界に、キラキラと輝く白い光が入りこんできた。
正体を見極めようと、ゆっくりと瞳を動かす。
「な、なに?髪の毛?」
日の光を反射する見事なプラチナブロンドだった。サラサラと流れ落ちるそれがプリシラの頬をくすぐる。
「ん、くすぐった……」
「プリシラ!僕だよ、フレッドだ」
「え?」
プリシラは思わず、ゴシゴシと目をこすった。夢の続きを見ているのだろうか。それにしては、やけにリアルや夢だ。
心配そうにこちらをのぞきこむ優しげな瞳。少しやつれてはいるが相変わらずの美貌だった。
「ほ、本物?」
思わず馬鹿な問いかけをしてしまう。




< 121 / 143 >

この作品をシェア

pagetop