次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
フレッドの話は、プリシラが予想もしていなかったものだった。それは彼が産まれる前まで遡る。
「母にはね、長いこと想い合っていた恋人がいたらしいんだ。だけど、急死した姉の代わりに王家に嫁ぐことになって……父親、僕の祖父であるザワン公爵に別れさせられてしまったんだ」
サーシャ王妃に姉がいて、元々は彼女が王妃になる予定だったことはプリシラも知っていた。
ひどい話ではあるが、よくあることでもる。
現にプリシラも、フレッドがダメならその弟と、という単純な理屈でディルと結婚したのだから。
「けれど、問題がひとつ。結婚式のとき、すでに母のお腹には僕がいたんだ。父親は……間違いなく恋人の方」
フレッドは淡々と語ったが、プリシラは驚きのあまりしばらく声が出なかった。
「……そんなっ」
フレッドは陛下の子どもではない!?それが真実ならば、いまのミレイア王国の法では、フレッドの王位継承権は認められないはすだ。
プリシラの視線を受けて、フレッドはすまないと言うように、軽く肩をすくめた。
「母と祖父をかばうわけじゃないけど、最初から陛下を騙すつもりはなかったんだよ」
ザワン公爵は産まれた子は死産だったと陛下に報告するつもりだった。お産に関わる人間はすべてザワン家の息のかかった者にして、秘密を隠し通す覚悟でいた。
「僕はこっそりと実の父親の元に届けられる予定だったんだ。父は画家で、身分は低いけど生活はそれなりに裕福だったみたいだから」
ところが、フレッドが産まれたその日、事情が変わってしまった。たいへんな難産で、サーシャ王妃は二度と子どもの産めない身体になってしまったのだ。
「祖父の気持ちも……わからなくはないんだ」
「そうね。私のお父様も、もし同じ状況だったら……」
権力への執着、それももちろんあるだろう。だが、それだけではない。子を成せない王妃という立場は辛いものだ。
「母にはね、長いこと想い合っていた恋人がいたらしいんだ。だけど、急死した姉の代わりに王家に嫁ぐことになって……父親、僕の祖父であるザワン公爵に別れさせられてしまったんだ」
サーシャ王妃に姉がいて、元々は彼女が王妃になる予定だったことはプリシラも知っていた。
ひどい話ではあるが、よくあることでもる。
現にプリシラも、フレッドがダメならその弟と、という単純な理屈でディルと結婚したのだから。
「けれど、問題がひとつ。結婚式のとき、すでに母のお腹には僕がいたんだ。父親は……間違いなく恋人の方」
フレッドは淡々と語ったが、プリシラは驚きのあまりしばらく声が出なかった。
「……そんなっ」
フレッドは陛下の子どもではない!?それが真実ならば、いまのミレイア王国の法では、フレッドの王位継承権は認められないはすだ。
プリシラの視線を受けて、フレッドはすまないと言うように、軽く肩をすくめた。
「母と祖父をかばうわけじゃないけど、最初から陛下を騙すつもりはなかったんだよ」
ザワン公爵は産まれた子は死産だったと陛下に報告するつもりだった。お産に関わる人間はすべてザワン家の息のかかった者にして、秘密を隠し通す覚悟でいた。
「僕はこっそりと実の父親の元に届けられる予定だったんだ。父は画家で、身分は低いけど生活はそれなりに裕福だったみたいだから」
ところが、フレッドが産まれたその日、事情が変わってしまった。たいへんな難産で、サーシャ王妃は二度と子どもの産めない身体になってしまったのだ。
「祖父の気持ちも……わからなくはないんだ」
「そうね。私のお父様も、もし同じ状況だったら……」
権力への執着、それももちろんあるだろう。だが、それだけではない。子を成せない王妃という立場は辛いものだ。