次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「うん。僕が死ぬのが一番いい解決策だ。その答えはずいぶん前から出ていたんだ。あのエスファン帝国にいる継承者よりは、ディルを推す声が多いはずだし。けど、僕がグズグズしている間にルワンナ王妃が力をつけはじめて、ややこしくなってしまった」
「グズグズしてて、よかったわ。死ぬなんて、絶対ダメよ」
プリシラは自分が情けなかった。フレッドにはたくさん助けてもらってきたのに、なにひとつ返すことができていなかった。
「でも君との結婚式を前にして、さすがに焦りはじめた。子どもでも生まれてしまったら、もう引き返せなくなる。あのパーティーの夜、今日が最後のチャンスだ、覚悟を決めよう。そう思った」
そして、遺書も書いた。自死ではなく失踪を装ったのは、その方が自然だと思ったからだ。堅苦しい王宮を出て自由になりたかった。けれど、逃亡途中に不慮の事故で亡くなった。そう言う筋書きだったとフレッドは語った。
「真実は、明かさない方がいいと思ったんだ。ザワン公爵はまだ国にとって必要な人材……いや、単なる身内の情かな?ーー僕にとっては、優しい祖父だったんだ」
フレッドは優しすぎたのかもしれない。優しすぎるから、追いつめられて、どこへも行けなくなってしまったのだ。
「けど、ディルにだけは秘密の手がかりをーー母から受け取った手紙をね、残してしまった。彼が知れば、僕の死に責任を感じるのもわかったうえでね。あのときは母の気持ちがよくわかったよ。人間、死ぬときくらいは楽になりたいんだなー。秘密を墓場まで持っていくのは、すごく重荷なんだ」
そして、ディルはその手がかりを見つけた。早朝にユーレナに出かけたというあの日、あれはきっと秘密の真偽を確かめに行ったのだろう。
「グズグズしてて、よかったわ。死ぬなんて、絶対ダメよ」
プリシラは自分が情けなかった。フレッドにはたくさん助けてもらってきたのに、なにひとつ返すことができていなかった。
「でも君との結婚式を前にして、さすがに焦りはじめた。子どもでも生まれてしまったら、もう引き返せなくなる。あのパーティーの夜、今日が最後のチャンスだ、覚悟を決めよう。そう思った」
そして、遺書も書いた。自死ではなく失踪を装ったのは、その方が自然だと思ったからだ。堅苦しい王宮を出て自由になりたかった。けれど、逃亡途中に不慮の事故で亡くなった。そう言う筋書きだったとフレッドは語った。
「真実は、明かさない方がいいと思ったんだ。ザワン公爵はまだ国にとって必要な人材……いや、単なる身内の情かな?ーー僕にとっては、優しい祖父だったんだ」
フレッドは優しすぎたのかもしれない。優しすぎるから、追いつめられて、どこへも行けなくなってしまったのだ。
「けど、ディルにだけは秘密の手がかりをーー母から受け取った手紙をね、残してしまった。彼が知れば、僕の死に責任を感じるのもわかったうえでね。あのときは母の気持ちがよくわかったよ。人間、死ぬときくらいは楽になりたいんだなー。秘密を墓場まで持っていくのは、すごく重荷なんだ」
そして、ディルはその手がかりを見つけた。早朝にユーレナに出かけたというあの日、あれはきっと秘密の真偽を確かめに行ったのだろう。