次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「いやぁ、だってね、圧倒的に分が悪いのはナイードの側みたいだから。命さえ助かれば……ってことは、君にはもうなんの切札も残ってない。これは最後の悪あがきってとこだろ?」
ナイードは答えなかったが、その表情からフレッドの読みが間違えていないことはわかる。
「すぐに王都警備隊がここを見つけてくれるさ。おそらく、ここはルワンナ王妃の私領のどこかだろう?王妃がつかまった今なら、自由に捜索できるはずだ」
「そうだといいけど……」
プリシラはフレッドほどは状況を楽観視できなかった。ナイードがやけを起こす可能性だってあるし、元気そうに見えるけど長い軟禁生活でフレッドは多少なりとも衰弱しているはずだ。
(フレッドだけでも、ここから逃がすことはできないかしら?……天窓はどう考えても体が通らない。鉄格子を壊すのも不可能そう。ナイードから鍵を奪う?そんなに甘くはないわよね)
「心配しなくても大丈夫だよ、プリシラ。ほら、満を持してヒーローの登場だ」
フレッドはそう言って鉄格子の外に視線を向ける。カンカンと階段を駆け上がる音とともに、息を切らせたディルが姿をあらわした。
「やぁ。遅いよ、ディル。フレッド姫は待ちくたびれたよ」
「うるさい。誰が姫だ」
突然あらわれたディルに驚いて、言葉も出ないプリシラとは対照的に、フレッドは鷹揚にディルを迎えた。まるでこのタイミングでディルが来ることを知っていたみたいだ。
プリシラがそう言うと、フレッドは声をあげて笑った
「そりゃ、わかるさ。君がつかまってるんだもん。ディルは光の速さで飛んでくるよ」
「プリシラ」
ディルに名を呼ばれ、プリシラは彼を見た。
無事でよかった。助けに来てくれて、ありがとう。フレッドを必ず助けて。伝えたいことはたくさんあるのに、言葉にならない。ディルが名前を呼んでくれた。それだけで胸がいっぱいになってしまう。
自分でも驚くほどだ。いつの間に、ディルの存在はこんなにも大きくなっていたのだろう。無邪気な恋心はプリシラ自身も気づかぬうちに、深い愛へと変わっていた。
「悪い。光の速さには敵わなかったな」
ディルもまた、慈しむような眼差しをプリシラに向ける。自分と同じ、いや、それ以上に彼も自分を愛してくれている。それがはっきりとわかる。
(ディルがいてくれる。怖いものなんて、なにもない。ディルもフレッドも絶対に無事に王宮に連れて帰らなきゃ)
ナイードは答えなかったが、その表情からフレッドの読みが間違えていないことはわかる。
「すぐに王都警備隊がここを見つけてくれるさ。おそらく、ここはルワンナ王妃の私領のどこかだろう?王妃がつかまった今なら、自由に捜索できるはずだ」
「そうだといいけど……」
プリシラはフレッドほどは状況を楽観視できなかった。ナイードがやけを起こす可能性だってあるし、元気そうに見えるけど長い軟禁生活でフレッドは多少なりとも衰弱しているはずだ。
(フレッドだけでも、ここから逃がすことはできないかしら?……天窓はどう考えても体が通らない。鉄格子を壊すのも不可能そう。ナイードから鍵を奪う?そんなに甘くはないわよね)
「心配しなくても大丈夫だよ、プリシラ。ほら、満を持してヒーローの登場だ」
フレッドはそう言って鉄格子の外に視線を向ける。カンカンと階段を駆け上がる音とともに、息を切らせたディルが姿をあらわした。
「やぁ。遅いよ、ディル。フレッド姫は待ちくたびれたよ」
「うるさい。誰が姫だ」
突然あらわれたディルに驚いて、言葉も出ないプリシラとは対照的に、フレッドは鷹揚にディルを迎えた。まるでこのタイミングでディルが来ることを知っていたみたいだ。
プリシラがそう言うと、フレッドは声をあげて笑った
「そりゃ、わかるさ。君がつかまってるんだもん。ディルは光の速さで飛んでくるよ」
「プリシラ」
ディルに名を呼ばれ、プリシラは彼を見た。
無事でよかった。助けに来てくれて、ありがとう。フレッドを必ず助けて。伝えたいことはたくさんあるのに、言葉にならない。ディルが名前を呼んでくれた。それだけで胸がいっぱいになってしまう。
自分でも驚くほどだ。いつの間に、ディルの存在はこんなにも大きくなっていたのだろう。無邪気な恋心はプリシラ自身も気づかぬうちに、深い愛へと変わっていた。
「悪い。光の速さには敵わなかったな」
ディルもまた、慈しむような眼差しをプリシラに向ける。自分と同じ、いや、それ以上に彼も自分を愛してくれている。それがはっきりとわかる。
(ディルがいてくれる。怖いものなんて、なにもない。ディルもフレッドも絶対に無事に王宮に連れて帰らなきゃ)