次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
ロベルト公爵はフレッド暗殺の疑惑が晴れ、一度は釈放されたものの、真犯人が自身の側近であるナイードだったために再度、王都警備隊からの取り調べを受けていたのだ。昨日、ようやく開放された。
ずいぶんと長いこと拘束された上に、関与自体は否定されたものの、部下の監督責任を問われ罰を受けたのだ。
「よりによって、王都近くの一番実入りのよい領地を没収だなんて……」
「ナイードみたいな信用ならない男を側に置いたお父様も悪いと思うわ」
「いや、ああいう胡散臭い奴ほど敵に回さず抱え込んでおいた方が得策だと思ったんだがな……とんだ大失敗だったよ」
ブツブツと不満を漏らす父親の背中を、プリシラは励ますようにぽんぽんと軽く叩いた。
「お父様は近頃ちょっと、太りすぎだったのよ。少しスリムになって、ちょうどいいくらいだわ」
私服を肥やしすぎると、あちこちから妬まれる。いいことばかりではないはずだ。
「うむ。最大のライバルだったザワン公爵も隠居しちゃうんじゃ、張り合いもないしな。私も少しのんびりするかね」
ザワン公爵は事件のすぐ後、公爵位を甥に譲り自身は隠居することを発表した。私財はすべて孤児院に寄附をしたそうで、これまでとは比べものにならない慎ましい余生を送っているらしい。
引退は高齢のためだろうと言われているが、ロベルト公爵の情報網なら真実が耳に届いているかもしれない。
それでも素知らぬ顔を通しているところは、我が父ながら、なかなか男らしいとプリシラは密かに公爵を見直した。
「それにしても、あのディル殿下が明日には新国王なんてね……」
ローザがしみじみとつぶやいた。
「ローザはまだディル殿下が嫌いなの?」
プリシラはくすくすと笑いながら、言った。
「ええ。プリシラ様を泣かすようなことは、たとえ国王陛下であっても許しませんと伝えてくださいな」
「頼もしいわね。でも、心配いらないわ。ディル殿下はとっても素敵な旦那様だから」
それからプリシラはディルがどれだけ素敵か、
自分がどれほど幸せかを、みなが疲れ切って音を上げるまで延々と語り続けた。
ずいぶんと長いこと拘束された上に、関与自体は否定されたものの、部下の監督責任を問われ罰を受けたのだ。
「よりによって、王都近くの一番実入りのよい領地を没収だなんて……」
「ナイードみたいな信用ならない男を側に置いたお父様も悪いと思うわ」
「いや、ああいう胡散臭い奴ほど敵に回さず抱え込んでおいた方が得策だと思ったんだがな……とんだ大失敗だったよ」
ブツブツと不満を漏らす父親の背中を、プリシラは励ますようにぽんぽんと軽く叩いた。
「お父様は近頃ちょっと、太りすぎだったのよ。少しスリムになって、ちょうどいいくらいだわ」
私服を肥やしすぎると、あちこちから妬まれる。いいことばかりではないはずだ。
「うむ。最大のライバルだったザワン公爵も隠居しちゃうんじゃ、張り合いもないしな。私も少しのんびりするかね」
ザワン公爵は事件のすぐ後、公爵位を甥に譲り自身は隠居することを発表した。私財はすべて孤児院に寄附をしたそうで、これまでとは比べものにならない慎ましい余生を送っているらしい。
引退は高齢のためだろうと言われているが、ロベルト公爵の情報網なら真実が耳に届いているかもしれない。
それでも素知らぬ顔を通しているところは、我が父ながら、なかなか男らしいとプリシラは密かに公爵を見直した。
「それにしても、あのディル殿下が明日には新国王なんてね……」
ローザがしみじみとつぶやいた。
「ローザはまだディル殿下が嫌いなの?」
プリシラはくすくすと笑いながら、言った。
「ええ。プリシラ様を泣かすようなことは、たとえ国王陛下であっても許しませんと伝えてくださいな」
「頼もしいわね。でも、心配いらないわ。ディル殿下はとっても素敵な旦那様だから」
それからプリシラはディルがどれだけ素敵か、
自分がどれほど幸せかを、みなが疲れ切って音を上げるまで延々と語り続けた。