次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
まっすぐにミモザの宮に戻る気にはなれずに、プリシラは中庭へと向かった。
散歩でもしながら少し頭を整理しようと思ったからだ。
晴れた日には小さな虹がかかる噴水、大輪の薔薇が咲き誇る美しい花壇、当代随一の芸術家に造らせた彫刻。贅を凝らしたこの中庭はミレイア王国の自慢のひとつだ。のんびりと歩いているのはプリシラくらいのもので、多くの人間がせわしなく行き交っていた。
(お父様はああ言ってくれたけど‥‥王太子の交代を決めたということは、フレッドが見つかる可能性は薄いということなのかしら?まさかもう‥‥)
最悪の可能性が頭をよぎり、プリシラは必死でそれを打ち消した。
(大丈夫、大丈夫よ。フレッドはきっと帰ってくる)
いまはその可能性に縋るしかなかった。フレッドの安否もわからないままディルと結婚するなんて‥‥。
だけど、フレッドが戻る可能性はどのくらいあるだろうか。王都警備隊が国中くまなく探しても見つからないのに?
ぐらりと足元が揺らぎ、血の気がひいていく。
「ーーですか?プリシラ様」
「え?」
突然誰かに名前を呼ばれ、プリシラははっと我に返る。
「大丈夫ですか?どこかお体の具合でも?」
倒れかけたプリシラの体をそっと支えてくれているのは、ディルの一番の側近、ターナだった。もちろんプリシラにとっても良き友人のひとりだ。
「あぁ、ありがとう、ターナ。大丈夫よ、少しめまいがしただけ」
プリシラはターナの手を借りながら、体を起こした。
「本当に?少し休まれた方がいいのでは?」
「ううん、本当に平気。今日はコルセットをきつく締めすぎちゃったみたい」
プリシラは自分のウエストを指差しながら、おどけて言った。生真面目なターナの表情が少し緩む。
「では、少しお話してもいいでしょうか?」
「もちろんよ」
「実はいまミモザの宮に遣いを出すところだったんです」
「そうなの?私になにか?」
「えぇ。我が主、ディル殿下からディナーのお誘いです」
散歩でもしながら少し頭を整理しようと思ったからだ。
晴れた日には小さな虹がかかる噴水、大輪の薔薇が咲き誇る美しい花壇、当代随一の芸術家に造らせた彫刻。贅を凝らしたこの中庭はミレイア王国の自慢のひとつだ。のんびりと歩いているのはプリシラくらいのもので、多くの人間がせわしなく行き交っていた。
(お父様はああ言ってくれたけど‥‥王太子の交代を決めたということは、フレッドが見つかる可能性は薄いということなのかしら?まさかもう‥‥)
最悪の可能性が頭をよぎり、プリシラは必死でそれを打ち消した。
(大丈夫、大丈夫よ。フレッドはきっと帰ってくる)
いまはその可能性に縋るしかなかった。フレッドの安否もわからないままディルと結婚するなんて‥‥。
だけど、フレッドが戻る可能性はどのくらいあるだろうか。王都警備隊が国中くまなく探しても見つからないのに?
ぐらりと足元が揺らぎ、血の気がひいていく。
「ーーですか?プリシラ様」
「え?」
突然誰かに名前を呼ばれ、プリシラははっと我に返る。
「大丈夫ですか?どこかお体の具合でも?」
倒れかけたプリシラの体をそっと支えてくれているのは、ディルの一番の側近、ターナだった。もちろんプリシラにとっても良き友人のひとりだ。
「あぁ、ありがとう、ターナ。大丈夫よ、少しめまいがしただけ」
プリシラはターナの手を借りながら、体を起こした。
「本当に?少し休まれた方がいいのでは?」
「ううん、本当に平気。今日はコルセットをきつく締めすぎちゃったみたい」
プリシラは自分のウエストを指差しながら、おどけて言った。生真面目なターナの表情が少し緩む。
「では、少しお話してもいいでしょうか?」
「もちろんよ」
「実はいまミモザの宮に遣いを出すところだったんです」
「そうなの?私になにか?」
「えぇ。我が主、ディル殿下からディナーのお誘いです」