次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「それは側近としての建前?それともターナの本心?」
呪われた王子などというくだらない予言は別としても、ディルの素行がよろしくないことは周知の事実だ。
「もちろん後者です。誰が否定しても、プリシラ様だけは僕と同意見だと思っていましたが?」
自信たっぷりに微笑むターナに、プリシラも思わず笑ってしまった。
「ーーそうね。ディルは求められる役割を演じているだけだもの」
呪われた子、役立たずの第二王子、優秀なフレッドの引き立て役。宮廷が、国王が、国民が、ディルにそれを求めるから応じているだけだ。
「はい。フレッド殿下の代役を求められれば、完璧に。いえ、本物以上にやれる方だと思っています」
フレッドは幼い頃から学問も武芸も完璧にこなす天才だと言われていた。ディルも優秀ではあるが、フレッドには一歩及ばない。教師たちはふたりをそう評していた。だけど、プリシラはとうに気づいていた。おそらくフレッドもだろう。
ディルは自分の能力を上手に調整していた。教師に文句をつけられないレベル、なおかつフレッドよりは前に出ないよう
にと。
第二王子としては正しい行動なのかもしれないが、歯がゆく思うときもあった。
ずっと近くで支えているターナはなおのことだろう。

「えっと‥‥違いますよ。あの人はフレッド殿下のためとか、世を乱さないためとかそんな立派な志は持ってませんよ。単純に自分自身にすら興味がないんですよ」
「一番の側近にこんなこと言われて‥‥仕方ない主人ね」
プリシラが笑うと、ターナもふっと笑顔を見せた。童顔を気にしているせいか、ターナは普段笑った顔を人に見せない。

(笑うと本当に可愛いんだけどね‥‥なんて言うと、二度と笑ってくれなくなっちゃうか)
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