次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「褒めてるつもりですよ。権力者が無欲なのは美徳でしょう?」
「ふふっ。褒めてるようには聞こえなかったわ」
ディルが王太子になること、好意的に受け取る人間ばかりではないだろう。
(だけど、ターナが側にいてくれるなら、ディルはきっと大丈夫だわ)
「あぁ、無欲ではないですね。たったひとつが大きすぎるのかな」
「ん?なにか言った?」
「いえ、ひとり言です」
「じゃあ、結婚については?どう思う?」
ターナは少し考えこむ素ぶりを見せた。
「プリシラ様はどう思っています?」
「あ、ずるい」
「答えなくてもいいですよ。ただ‥‥さすがは公爵家のご令嬢だなと感心していました」
プリシラの葛藤、苛立ち。顔には出さないよう気をつけていたつもりだったけれど、見破られてしまったらしい。
「そうね。ロベルト公爵家のひとり娘という立場を忘れていいのなら‥‥お父様を張り倒してやりたいわ。これまでフレッド殿下に相応しい女性にってうるさいほど言ってきたくせに」
フレッドに相応しい女性になるために、ディルへの思いは必死に断ち切ろうとしてきたのだ。それなのに、いまさらディルの妻になれだなんて‥‥あまりにひどい話じゃないだろうか。
「おふたりは良き王と王妃になられると思いますよ。フレッド殿下の失踪などというややこしい事情がなければ、心から祝福したかったのですが」
「そのややこしい事情がなかったら、結婚のけの字も出てこなかったわよ」
「それはたしかに‥‥」
「って、ターナに八つ当たりしても仕方ないわね。ごめんなさい。ーーディルによろしく伝えて」
「はい。また明日」
「えぇ、明日ね」
「ふふっ。褒めてるようには聞こえなかったわ」
ディルが王太子になること、好意的に受け取る人間ばかりではないだろう。
(だけど、ターナが側にいてくれるなら、ディルはきっと大丈夫だわ)
「あぁ、無欲ではないですね。たったひとつが大きすぎるのかな」
「ん?なにか言った?」
「いえ、ひとり言です」
「じゃあ、結婚については?どう思う?」
ターナは少し考えこむ素ぶりを見せた。
「プリシラ様はどう思っています?」
「あ、ずるい」
「答えなくてもいいですよ。ただ‥‥さすがは公爵家のご令嬢だなと感心していました」
プリシラの葛藤、苛立ち。顔には出さないよう気をつけていたつもりだったけれど、見破られてしまったらしい。
「そうね。ロベルト公爵家のひとり娘という立場を忘れていいのなら‥‥お父様を張り倒してやりたいわ。これまでフレッド殿下に相応しい女性にってうるさいほど言ってきたくせに」
フレッドに相応しい女性になるために、ディルへの思いは必死に断ち切ろうとしてきたのだ。それなのに、いまさらディルの妻になれだなんて‥‥あまりにひどい話じゃないだろうか。
「おふたりは良き王と王妃になられると思いますよ。フレッド殿下の失踪などというややこしい事情がなければ、心から祝福したかったのですが」
「そのややこしい事情がなかったら、結婚のけの字も出てこなかったわよ」
「それはたしかに‥‥」
「って、ターナに八つ当たりしても仕方ないわね。ごめんなさい。ーーディルによろしく伝えて」
「はい。また明日」
「えぇ、明日ね」